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次世代冷却システムに関する研究(平成23年度研究概要)

1.背景及び目的

わが国の機械工業は国際競争力が激化する中、その環境は厳しさを増す一方であります。その中で経済構造改革を推進し、経済活力の向上を図るための先端的な技術開発、情報化の推進、地域産業活性化のための技術開発、環境問題への取組み、グローバル戦略の推進、国際競争力強化の重要性はますます高まってきています。そのなかで、民生電子機器、サーバー、及び通信設備の小型化により、「機器駆動のための電力」と「排熱を処理するための電力」が飛躍的に増加してきており、機器駆動及び排熱機器の省電力化が急務となっています。この問題を解決するため、排熱用冷媒還流の動力を必要とせず、信頼性の高い技術の開発が求められています。本研究においては、ヒートパイプの技術を応用した無動力で信頼性の高い熱制御素子(ループヒートパイプ、LHP : Loop Heat Pipe)の実用化を目的としています。

2.研究概要

LHPの機能を図1に示します。LHPの原理は、蒸発器内のウィックの毛細管力により流体を環流させることです。LHPの動作は、蒸発器に加えられた熱で蒸発器内の液体を気化させ、蒸気として蒸気管を流れ凝縮器内で凝縮します。凝縮した液体は、液管を流れ、蒸発器内の毛細管力によりに蒸発器に戻ります。本年度は、原子力発電所の使用済み核燃料棒の冷却をターゲットとして数kWの熱輸送能力を有するLHPの設計検討を「LHP設計ツール」を用いて行います。さらに図2に示す「高性能蒸発器」の試作・試験から、上記に対応可能なLHPを目指したの熱輸送能力試験の開発を行います。

LHPの機能

図1 LHPの機能

試作LHP

図2 試作LHP

3. 期待される効果

LHPは熱輸送のための外部動力を必要としないため環境配慮の点、さらに信頼性の点で優れています。その用途としてサーバー内のブレードの熱輸送に使用すると多大な省エネ効果があることを示しました。このような省エネ効果のあるLHPを電子機器の熱制御のみならず、家庭とくに住宅関連への適用を広げていくことで日本全体での温暖化の防止に多大なる貢献が可能であります。さらに、原子力発電所の使用済み核燃料棒の冷却にLHPを用いることにより非常時に電力が供給されない場合でも安定的な冷却が可能であり、原子炉の安全性向上に貢献します。

4. 参考文献

  1. 1 田中清志,次世代冷却システムに関するKSK-GH22-4-1(2011)
  2. 2 田中清志,ループヒートパイプ(LHP)設計ツールの開発, 第47回伝熱シンポジウム講演論文集(2010),I213
  3. 3 田中清志,温度制御による加工技術信頼性向上に関する研究,KSK-GH21-3(2010)
  4. 4 K. Tanaka, "Thermal Performance of the Mini-Loop Heat Pipe (LHP)"ASME 2009 Summer Heat Transfer Conference (2009)
  5. 5 田中清志,ミニループヒートパイプの伝熱能力, 第46回伝熱シンポジウム講演論文集(2009),G334
  6. 6 田中清志,温度制御による加工技術信頼性向上に関する研究,KSK-GH20-3(2009)
  7. 7 K. Tanaka, "Development of the Loop Heat Pipe (LHP)"ASME 2008 Summer Heat Transfer Conference (2008)
  8. 8 田中清志, ループヒートパイプの試作, 日本ヒートパイプ協会第27回総会および講演会
  9. 9 田中清志,ループヒートパイプの開発, 第45回伝熱シンポジウム講演論文集(2008),H121
  10. 10 田中清志,温度制御による加工技術信頼性向上に関する研究,KSK-GH19-3(2008)
  11. 11 田中清志,勝田正文,展開ラジエータ(CPDR)の軌道上評価(CPLの無重力下での熱輸送特性),機講論,No-71-708,B(2005),155-162
  12. 12 K. Tanaka, "Thermal Performance of the Capillary Pumped Deployable Radiator"12th International Heat Transfer Conference (2002), Volume 4/447-452