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現場環境における三次元測定機の高度化に関する研究(平成23年度研究概要)
1.背景及び目的
近年、製造業における三次元測定機(座標測定機、Coordinate Measuring Machine、 以下CMM)の普及度は極めて高くなってきています。それにともない、CMMの設置環境も整った環境ばかりでなく、製造ラインに設置されている場合等、測定機としては過酷な環境に設置されることが多くなってきています。しかし、過酷な環境においても、測定精度への要求はますます高くなってきています。そこで、本研究では現場環境でCMMを使う場合に問題となる要因を解析し、問題解決のための提案を行うことを通して、現場環境の三次元測定の高度化および信頼性の向上を図っていきます。
2.研究概要
現在までの研究において、ダブルボールバー、ステップゲージ及びボールプレート等による評価結果から、CMMの測定精度において直角度の寄与率が非常に高いことを確認するとともに、以下に示す提案を行ってきました。
- 1温度変化による座標値のドリフトの原因を解明するとともに、温度ドリフト補正法の提案(図2)
- 2低熱膨張ブロックゲージの目盛誤差からスケール温度計の補正を行ない、鋼製のブロックゲージの目盛誤差からワーク温度計の補正を行う温度補正法の提案及び熱の影響による温度測定の誤差への影響の解明(図3)
- 3企業等の現場においても応用できる簡易で安定性の高いマシンチェックゲージ(図4)による評価法を提案するとともに、この評価法を用いて、直角度の補正法の提案
- 4回転式プロービングシステムによる測定の指示誤差である形状誤差,サイズ誤差,位置誤差の評価を行うとともに,CMMの直角誤差を利用して,校正球の位置と測定位置の直角誤差の値を用いて位置誤差を評価する手法を提案
- 5企業での改善活動において、プローブの測定圧力によるプロービング誤差への影響を解明するとともに、測定圧力の最適化によりプロービング誤差の低減及びスタイラス球の汚れの測定精度への影響を解明するとともに、汚れの洗浄方法の提案
図1 測定の不確かさに影響を及ぼす要因
図2 温度ドリフトのモデル
図3 鋼製と低熱膨張製ブロックゲージの目盛り誤差の比較
図4 マシンチェックゲージ
さらに、今年度は以下の通り進めます。
- 三次元測定機については、低熱膨張製と鋼製の二次元標準器(ホールプレート等)を用いて温度等の環境条件による測定機の挙動を解析するととともに、その補正法の提案(図5)
- 目盛誤差の要因となる誤差を検討することにより,スケールとワークの温度補正の効果を解析する
図5 低熱膨張製と鋼製の二次元ゲージの比較
3.期待される効果
これらが実現されることにより、現在ユーザが使用している測定機の持つ精度以上の高度化が可能となり、生産現場の製品精度向上が期待できます。