幾何形状測定の信頼性向上に関する研究(平成22年度研究概要)
1.実施内容
幾何形状測定機は、広く機械産業分野で利用されている測定機であり、幾何形状測定機の高精度化は、品質保証のうえで必要不可欠な要求になってきています。そこで、製造現場(以下 現場環境)での普及度が極めて高い三次元測定機(以下 CMM)および真円度測定機を取り上げ、CMMにおける現場環境の熱による影響の解析、マルチスタイラス測定における位置誤差の評価法および低減法、真円度測定機におけるプローブ校正法の開発、倍率校正用標準(切欠き標準)の最適な形状(直径と切欠き深さ)の提案等を行うことにより、これらの幾何形状測定の高精度化および信頼性の向上を図ってきました。
三次元測定機については、現在までの研究において、企業等の現場においても応用できる簡易で安定性の高いマシンチェックゲージ(図1)による評価法の提案、この評価法を用いて、直角度、目盛誤差の補正法の提案及び温度変化による座標値のドリフトの原因を解明するとともに、温度ドリフト補正法の提案を行ってきました。また、低熱膨張ブロックゲージの目盛誤差からスケール温度計の補正を行ない、普通(鋼製)のブロックゲージの目盛誤差からワーク温度計の補正を行う温度補正法の提案を行ってきました(図2)。
図1 マシンチェックゲージ
図2 低熱膨張ブロックゲージと普通(鋼製)の
ブロックゲージの目盛誤差の比較
さらに、平成22年度は、CMMについて、鋼製と低熱膨張製二次元ゲージを用いて温度変化による測定機とワークの挙動を解析するとともに,回転式プロービングシステムによる測定の指示誤差である形状誤差、サイズ誤差、位置誤差の評価を行いました。また、CMMの測定位置によって、直角誤差が変化していることを指摘するとともに、評価した校正球の位置と測定位置の直角誤差の値を用いて、位置誤差の評価が可能であることを確認しました。さらに、校正球の位置と測定位置を最適な位置に設置することにより、位置誤差を小さくできることを確認しました。これらの技術により、対象のCMMの円筒度測定において2.4μm程度改善することができました。
真円度測定機については、倍率校正用標準の値付けのための段差評価手法を確立するとともに、倍率校正用標準をスパッタ処理で製作することにより、ナノメートルオーダーの評価の可能性に対する知見が得られました。
2.予想される事業実施効果
これらが実現されることにより、現在ユーザが使用している測定機の持つ精度以上の高精度化が可能となり、生産現場の製品精度向上が期待できます。
3.本事業により作成した印刷物
(1)報告書
<KSK-GH22-2-1> 計測技術高度化に関する研究 -幾何形状測定の信頼性向上に関する研究-(平成22年3月)(5.00MB)
(2)外部発表(学会、協会、商業誌など)
No | 論文名 | 発表者名 | 発表先 |
---|---|---|---|
1 | 現場環境における三次元測定機の高度化に関する研究(第3報)-低熱膨張ブロックゲージを用いた温度補正の評価- | 大西 徹 高瀬省徳 高増 潔 |
精密工学会誌 Vol.76 No.5 2010 |
(3)口頭発表など
No | 題目 | 発表者名 | 発表会名 | 発表日 |
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1 | 現場環境における三次元測定機の高度化に関する研究-回転式プロービングシステムにおける位置誤差の評価- | 大西 徹 高瀬省徳 高増 潔 |
(社)精密工学会 | H22,9,27 |
2 | 段差評価手法による不確かさ比較 | 高瀬省徳 大西 徹 高増 潔 |
(社)精密工学会 | H22,9,28 |
3 | 現場環境における三次元測定機の高度化に関する研究-マルチスタイラス測定におけるプロービングシステムの指示誤差の評価- | 大西 徹 高瀬省徳 高増 潔 |
知的基盤部会 計測分科会 形状計測研究会 |
H22,10,21 |
4 | 真円度測定機倍率校正用切欠き標準について | 高瀬省徳 大西 徹 高増 潔 |
知的基盤部会 計測分科会 形状計測研究会 |
H22,10,21 |