標準技術活用による生産支援に関する研究(平成20年度研究概要)
1.実施内容
本研究では、平成20~21年度の2ヵ年で、異メーカ機器から成る生産システムの運用、および保守向けに、標準技術活用による遠隔監視、ドキュメント管理などの機能を、TV会議機能により遠隔拠点間で共有し、低いスキルの作業者の遠隔作業や保守支援を行う仕組みである「ポータル・コラボレーション型生産支援システムの研究」を実施します。
また、生産システム構築段階向けに、「シミュレーションによる生産システム構築効率化と品質向上の研究」を実施します。
それぞれの研究実施内容は次の通りです。
ポータル・コラボレーション型生産支援システムの研究
2007年問題などにより、熟練作業者が減少し、技術や技能の伝承が問題となっています。一方で、誰でも工場設備を容易に使いこなせるようにするための技術が必要とされています。また、工場が海外にある場合も多く、グローバルな拠点間での遠隔運用や保守支援が行える仕組みが求められています。
しかし、これまでの遠隔保守支援は、例えば工作機械向けに遠隔から制御装置の画面を閲覧することによる遠隔保守システムなどが実用化されていますが、仕組みが機器ベンダ依存なのが実情です。また、実務上、制御装置画面のみならず、機器周辺の状態、ドキュメントなどの情報も拠点間共有する仕組みが必要です。
そこで、標準技術を活用し、前身研究で実用化済みの異メーカ、異世代、異機種の機器の監視技術による監視情報と、監視情報と連携したドキュメント管理システムの情報とを、TV会議などのコラボレーション機能により拠点間共有し、生産システムの遠隔保守支援のみならず、遠隔運用支援も可能な仕組みであるポータル・コラボレーション型生産支援システム(図1)を提案し、本システムの実現に向けた研究開発を実施しております。
平成20年度は、遠隔地間で、紙図面等の非デジタル情報、3Dモデル、機器情報、ドキュメントを、同視点表示し、共通ポインタと会話により作業支援するコラボレーション機能を開発しました。また、現場側の周辺システムとして、工作機械の段取り後、ワークや治具をレーザスキャナで実測して、その計測情報と、制御装置の状態情報を加工シミュレータに自動送信し、工作機械で実際に加工する場合と同等な条件でシミュレーションすることで衝突を予知するシミュレータ連携型工作機械内衝突防止システムも開発しました。
図1 ポータル・コラボレーション型生産支援システムの研究
(用語)ポータル・コラボレーション型:
2人以上の人が同時に会話をしながらポータルサイト化されたシステムの機能を用いて、目的業務を実行することの意味の造語
シミュレーションによる生産システム構築効率化と品質向上の研究
前身研究の「グローバル生産における中小企業支援システムに関する研究(平成15~17年度)」では、分散シミュレーション技術、および、設備シミュレーション技術の研究開発を実施しました。開発した分散シミュレーション技術により、生産準備段階で普及している生産システムシミュレーションをネットワークで結合して、全体最適化の評価を実施可能となりました。また、開発した設備シミュレーション技術により、工程実装段階において重要な制御プログラム(ラダープログラム、ロボットプログラム等)を実機が設置される前に、評価できることを確認しました。
また、前身研究の「デジタルマニュファクチャリングに関する研究(平成18年度~19年度)」では、平成18年度は、運用段階で必要となる管理アプリケーションとシミュレーションとの結合による、生産システムをより早く構築するための技術開発を実施しました。平成19年度は、開発した設備シミュレーション技術を深化させ、シミュレーションと設備制御のより密接な連携の研究を実施しました。
平成20年度は、シミュレーションと設備制御のより密接な連携の研究を応用することで、シミュレーションによる生産システム構築効率化に加え、新たな視点として品質向上という視点からのシミュレーションと設備制御の連携の研究を実施しました。具体的には、三次元設備シミュレーションの画像表示技術を利用する外観検査プログラム品質の事前評価の研究を実施しました。図2に研究の概要を示します。
図2 シミュレーションによる生産システム構築効率化と品質向上の研究
2.予想される事業実施効果
ポータル・コラボレーション型生産支援システムの研究
本研究の効果として、まず、開発したコラボレーション機能については、幣所主催の基盤的生産技術研究会 標準技術活用ビジネス小研究会(8 社1 団体1大学4標準化団体参加)において、展示会出展、セミナ開催などにより成果を公開した結果、数多くの見学や問い合わせを頂いており、そのうち国内企業1社が製品化採用を検討中です。つぎに、シミュレータ連携型工作機械内衝突防止システムについては、工作機械内衝突防止システムの実用化に関する研究会(5社1団体参加)に成果が採択され、製品化に向けた検討を行っており、またユーザモニタ(候補5社)も準備中です。本システムについても問い合わせや見学が大変多い状況です。
本研究による平成20年度の成果公表実績数は、特許出願2件、論文発表1件、口頭発表(学会・講習会)11件、誌上発表(新聞・学会誌等)14件、展示会主品5件、セミナ3回です。
シミュレーション技術やその利用の高度化の研究
本研究の効果として、産業界では生産システムの構築時間短縮が至上命題であり、開発した事前評価技術はその解決策の一つであると考えています。また、本技術は、標準化技術ORiNやHLAを応用し開発しており、汎用性が高いシステムを提案している特徴があります。本技術は、数社が実際の導入の検討中で、海外からの問い合わせも増えています。また、開発した技術は、産業界等との共同研究(製造科学技術センター主催のIMSアイデアファクトリー、幣所主催の基盤的生産技術研究会等)において、導入を含めた検討を実施しています(6社、6大学参加) 。
本研究による平成20年度の成果公表実績数は、特許出願3件、論文発表3件、口頭発表(学会・講習会)6件、誌上発表(新聞・学会誌等)4件、展示会出品1件です。
3.本事業により作成した印刷物等
(1)報告書
<KSK-GH20-1>標準技術活用による生産支援に関する研究(平成21年3月)(9.45MB)
(2)外部発表(学会、協会、商業誌など)
論文発表 | 論文名 | 発表先 | 発表者 | 年月日 |
---|---|---|---|---|
(雑誌記事) | OPCとORiN~MESの観点からみたモノ作り革新 | 月間「計装」 2008年4月号 別冊 工業技術社 | 木下守克 大寺信行 木村利明 |
H20.4 |
(特許出願) | 特願2008-106585ハンズフリー型コンピュータ装置及びコンピュータシステム | 特許庁 | 木村利明 | H20.4.16 |
(査読論文) | Module Structured Production System | The41th CIRP Conference on Manufacturing System, p303-308. Published by Springer | 日比野浩典他3名 | H20.5.28 |
(特許出願) | 特願2008-134294 シミュレーション装置 | 特許庁 | 日比野浩典他2名 | H20.5.22 |
(解説記事) | 生産システム構築効率化のためのネットワークミドルウエアを利用するシミュレーション技術 | 韓国学会誌:Automation Systems Vol.24, No.5 70-75 | 日比野浩典 | H20.5 |
(表彰) | 日本機械学会生産システム部門貢献表彰 | 日本機械学会 | 日比野浩典 | H20.7.11 |
(公共ウェブサイト掲載) | ORiNを用いた3-D表示遠隔監視システム(3-DLIVE)(2008年8月発行版) | ORiN協議会ホームページ 事例・製品紹介 | 木村利明 | H20.8 |
(公共ウェブサイト掲載) | FOCAS1/2 プロバイダ(2008年8月発行版) | ORiN協議会ホームページ 事例・製品紹介 | ソフィックス、木村利明 | H20.8 |
(公共ウェブサイト掲載) | MII (Management Information Insesrter)(2008年8月発行版) | ORiN協議会ホームページ 事例・製品紹介 | ソフィックス、木村利明 | H20.8 |
(公共ウェブサイト掲載) | ADDO F2008 ORiN 情報ターミナル・ORiNバージョン(2008年8月発行版) | ORiN協議会ホームページ 事例・製品紹介 | アドー・ジャパン、木村利明 | H20.8 |
(公共ウェブサイト掲載) | ADDO N8511 ORiN プロトコルコンバータ・ORiNバージョン(2008年8月発行版) | ORiN協議会ホームページ 事例・製品紹介 | アドー・ジャパン、木村利明 | H20.8 |
(公共ウェブサイト掲載) | ネットワークインターフェース未搭載NC装置とORiNの接続(2008年8月発行版) | ORiN協議会ホームページ 事例・製品紹介 | アドー・ジャパン、木村利明 | H20.8 |
(公共ウェブサイト掲載) | WinDNC-SE ORiNバージョン(2008年8月発行版) | ORiN協議会ホームページ 事例・製品紹介 | アドー・ジャパン、木村利明 | H20.8 |
(公共ウェブサイト掲載) | メンテナンス支援システム・マニュアル検索システム(2008年8月発行版) | ORiN協議会ホームページ 事例・製品紹介 | 日本ユニシス・エクセリューションズ、木村利明 | H20.8 |
(特許出願) | 特願2008-210627 シミュレーション装置の画像データ生成装置 | 特許庁 | 日比野浩典他2名 | H20.8.19 |
(査読論文) | Simulation Environment to Minimize Lead-time of Manufacturing Cell Implementation Process Using Real Equipment Interaction. | APMS2008(International Conference on Advances in Production Management Systems) | 日比野浩典他3名 | H20.9.15 |
(新聞記事) | ロボット/FAネットワークミドルウェア | オートメレビュー 2008年特別号 | ORiN協議会、木村利明 | H20.9.10 |
(解説記事) | ユビキタス環境下における生産システムのシミュレーション | 精密工学会誌、2008 Vol.74 No.10 | 日比野浩典他 | H20.10.1 |
(特許出願) | 特願2008-280226工具衝突防止システム及び工具衝突防止方法 | 特許庁 | 木村利明 | H20.10.30 |
(新聞記事) | 工作機械のネットワーク化 | 日刊工業新聞 | 木村利明 日比野浩典 |
H20.10.30 |
(商業誌社ウェブサイト掲載) | 機械振興協会が既存のNC装置向け衝突防止システム | 日経BP社 TechOn | 木村利明 | H20.10.3 |
(商業誌社ウェブサイト掲載) | 機械振興協会など,遠隔監視用のコラボレーションツールを開発 | 日経BP社 TechOn | 木村利明 | H20.11.6 |
(査読論文) | Emulation in Manufacturing Engineering Processes | Winter Simulation Conference 2008 | 日比野浩典他 | H20.12 |
(書籍) | Enterprise Organization and Operation | Springer Handbook of Mechanical Engineering,2009 | 木村利明他8名 | H21.1 |
(特許出願) | 特願2009-067462 視覚検査装置の評価システム | 特許庁 | 日比野浩典他2名 | H21.3.19 |
(新聞社ウェブサイト掲載) | ネットワークミドルウエアで加速する工作機械のICT化 | 日刊工業新聞HP | 木村利明 | H20.11 |
(新聞社ウェブサイト掲載) | 工作機械のシステム化とシミュレーション技術 | 日刊工業新聞HP | 日比野浩典 | H20.11 |
(3)口頭発表・展示会など
口頭発表 | 発表題名 | 発表先 | 発表者 | 年月日 |
---|---|---|---|---|
(口頭発表) | Module Structured Production System | The41th CIRP Conference on Manufacturing System, p303-308. Published by Springer | 日比野浩典他3名 | H20.5.28 |
(展示会) | 新旧工作機械向け工作機械内衝突防止システム | 第20回設計・製造ソリューション展(東京ビッグサイト) | 木村利明他 | H20.6.25~6.27 |
(口頭発表) | 工作機械内衝突防止システムの開発(第1報)従来型NC装置向けプロトタイプシステム | 日本機械学会生産システム部門研究発表講演会2008 | 木村利明 岡部信孝 神田雄一 |
H20.7.4 |
(口頭発表) | 需要同期生産における負荷平準に関する研究 | 日本機械学会生産システム部門研究発表講演会2008 | 日比野浩典他4名 | H20.7.4 |
(口頭発表) | 生産現場で利用する3次元設備シミュレーション | IMSアイデアファクトリー総会 | 日比野浩典 | H20.7.11 |
(展示会) | 工場内の全ての機器接続とMES化 | MOF2008(東京ビッグサイト) | 木村利明他 | H20.9.10~9.12 |
(口頭発表) | Simulation Environment to Minimize Lead-time of Manufacturing Cell Implementation Process Using Real Equipment Interaction. | APMS2008(International Conference on Advances in Production Management Systems) | 日比野浩典他3名 | H20.9.15 |
(口頭発表) | マルチメディアコラボレーションによるリモートメンテナンスシステムの構築(第4報)現場端末用ハンズフリーコンピュータの開発 | 2008年度精密工学会秋季大会学術講演会 | 木村利明 井上貴博 神田雄一 |
H20.9.19 |
(展示会) | 工作機械内衝突防止システム | JIMTOF2008(東京ビッグサイト,ORiN協議会/(財)機械振興協会技術研究所 小間) | 木村利明他 | H20.10.30~11.4 |
(展示会) | 製造業向けコラボレーションシステム | JIMTOF2008(東京ビッグサイト,ORiN協議会/(財)機械振興協会技術研究所 小間) | 木村利明他 | H20.10.30~11.4 |
(展示会) | MES連携デモシステム | JIMTOF2008(東京ビッグサイト,ORiN協議会/(財)機械振興協会技術研究所 小間) | 木村利明他 | H20.10.30~11.4 |
(展示会) | 三次元設備シミュレーションの研究開発 | JIMTOF2008(東京ビッグサイト,ポスター展) | 日比野浩典 | H20.10.30~11.4 |
(論文集掲載) | 生産システム革新への新しい取り組み | 第13回国際工作機械技術者会議論文集P8-9 | 日比野浩典 | H20.10.30 |
(講習会・主催・講演) | ORiN協議会と標準技術活用ビジネス小研究会の活動紹介 | 標準ネットワークミドルウェアORiNの関連製品紹介セミナー(機械振興協会技術研究所主催,ORIN協議会共催) | 木村利明 | H20.11.26 |
(講習会・主催・講演) | 製造業向けコラボレーションシステム | 標準ネットワークミドルウェアORiNの関連製品紹介セミナー(機械振興協会技術研究所主催,ORIN協議会共催) | 木村利明 後藤文博 |
H20.11.26 |
(講習会・主催・講演) | 工作機械内衝突防止システム | 標準ネットワークミドルウェアORiNの関連製品紹介セミナー(機械振興協会技術研究所主催,ORIN協議会共催) | 木村利明 | H20.11.26 |
(口頭発表) | ORiNの最新動向 | 第9回計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会(計測自動制御学会主催) | 大寺信行 榊原聡 木村利明 水川真 |
H20.12.5 |
(口頭発表) | ORiNを活用した工作機械内衝突防止システムの開発 | 第9回計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会(計測自動制御学会主催) | 木村利明 神田雄一 |
H20.12.5 |
(口頭発表) | Emulation in Manufacturing Engineering Processes | Winter Simulation Conference 2008 | 日比野浩典他 | H20.12.13 |
(講習会・主催・講演) | 標準技術ORiNの概要と工作機械適用 | 標準技術の工作機械適用実習セミナー(機械振興協会技術研究所主催,ORIN協議会協賛) | 木村利明 | H21.1.27 |
(講習会・主催・講演) | 監視用Webプログラミング実習 | 標準技術の工作機械適用実習セミナー(機械振興協会技術研究所主催,ORIN協議会協賛) | 木村利明 | H21.1.27 |
(講習会・講演) | 標準技術(ORiN)を活用した工作機械のIT化 | IT活用によるNC加工と工作機械の稼動監視実習セミナー(日本機械学会・東洋大学主催) | 木村利明 | H21.3.5 |
(講習会・講演) | Webによる稼動監視プログラミング実習 | IT活用によるNC加工と工作機械の稼動監視実習セミナー(日本機械学会・東洋大学主催) | 木村利明 | H21.3.5 |
(口頭発表) | 需要同期生産における生産量予測方法の提案 | 日本機械学会 生産システム部門講演会2009 | 日比野浩典他 | H21.3.10 |