材料試験技術の高度化に関する研究(平成19年度研究概要)
1.実施内容
工業製品の品質、安全性を確保するためには、材料の基礎特性・機械的性質の評価を行う材料試験が非常に重要です。試験方法は、日本工業規格(JIS)、国際標準化機構(ISO)、米国材料試験協会(ASTM)などで規格化されており、各種試験を自動で効率よく実施する試験システムが実用化されています。近年の工業製品における微細化・高度化に伴って、複合材料や樹脂材料等の新素材に対応した材料試験や、超微小領域における材料特性評価などの新しい材料試験技術が重要な課題となってきています。そこで本研究では、以下に示すような2つのサブテーマを設定し検討を行いました。
(1)多軸材料試験
負荷方向により機械的性質が全く異なる新素材に対応するためには、多軸材料試験機を実現する必要があります。多軸試験機実現のために、パラレルメカニズムによる六軸の位置・力制御が可能なシステムを考案しました。より実用条件に近い材料評価方法の確立を目指すため、実験用小型モーションテーブルを試作し、効率よく実験が進められるよう制御ソフトウエアの改良を進め、基本的な評価実験を行いました。
図1 多軸材料試験システムの概要
(2)超微小硬さ試験
測定結果への試料の面性状が及ぼす影響を把握するために、試料表面の凹凸や傾きなどの三次元形状を把握可能な光学系を超微小硬さ試験機に組み込んだ装置を試作しました。傾きが試験結果に及ぼす影響を把握するために、試料面の角度を変化させて実験を行いました。また、三次元形状把握の性能を評価するために、試料表面の傾きだけでなく、これまで原子間力顕微鏡(AFM)などを用いて測定されていた圧痕の三次元観察を行いました。
図2 試作した超微小硬さ試験機の概観
図3 試作機による三次元圧痕像
図4 位相シフト干渉による圧痕断面寸法
2.予想される事業実施効果
(1)多軸試験機は現在実用化されておらず、標準の試験方法などが存在しません。したがって、実際の利用状態を想定したシミュレーション実験など、利用価値が高く、需要が高い分野で多軸荷重試験技術が確立できれば、当所技術協力センターでの受託試験への展開、様々な産業での利用・普及が期待できます。
(2)使用用途・範囲の拡大が著しい超微小硬さ試験は、さらに定量的で高精度な測定が期待されています。したがって、今後は解析法において本研究で検討したような傾きや湾曲の影響を試験結果に反映するような手法の実現が期待されます。また硬度測定からそのまま圧痕の三次元形状を観察できるようなシステムは非常に利便性が高く、総合的な物性評価試験として、超微小硬さ試験は様々な産業での利用・普及が期待できます。
3.本事業により作成した印刷物等
(1)報告書
<KSK-GH19-2> 計測技術高度化に関する研究(平成20年3月)
(2)国際会議・国内学会発表
No | 題目 | 発表者名 | 発表会名 | 発表日 |
---|---|---|---|---|
1 | A Multi-Axial Materials Testing System Using6-DOF Parallel Kinematics | 五嶋裕之 藤塚将行 田中 豊 |
ICMDT 2007 | H19,7,1 |
2 | パラレルメカニズムを用いた多軸材料試験システム | 五嶋裕之 藤塚将行 田中 豊 |
日本機械学会2007年度年次大会学術講演会 | H19,9,10 |
3 | Measurement of a residual impression by the laser scanning microscope with DIC unit | 藤塚将行 山口 誠 上野 滋 神山弦一郎 片山繁雄 |
HARDMEKO 2007 | H19,11,19 |