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デジタルマニュファクチャリングに関する研究(平成19年度研究概要)

1.実施内容

本研究では、平成18~19年度の2ヵ年で、生産システムをより早く構築するための分散型ネットワークによるシミュレーション技術やその利用の高度化、および、工作機械を対象に周辺情報も含むインプロセス監視に基づく生産システムの安全・高利便性運用支援技術の研究を実施しました。それぞれの研究実施内容は次の通りです。

シミュレーション技術やその利用の高度化の研究

前身研究の「グローバル生産における中小企業支援システムに関する研究(平成15~17年度)」では、分散シミュレーション技術、および、設備シミュレーション技術の研究開発を実施しました。開発した分散シミュレーション技術により、生産準備段階で普及している生産システムシミュレーションをネットワークで結合して、全体最適化の評価を実施可能となりました。また、開発した設備シミュレーション技術により、工程実装段階において重要な制御プログラム(ラダープログラム、ロボットプログラム等)を実機が設置される前に、評価できることを確認しました。

平成18年度は、運用段階で必要となる管理アプリケーションとシミュレーションとの結合による、生産システムをより早く構築するための技術開発を実施しました。平成19年度は、開発した設備シミュレーション技術を深化させ、シミュレーションと設備制御のより密接な連携の研究を実施しました。図1に研究の概要を示します。

シミュレーション技術とその利用の高度化の研究
図1 シミュレーション技術とその利用の高度化の研究

安全・高利便性運用支援技術の研究

本研究では、図2に示すように、現場の段取り間違いによる工作機械内衝突事故も予知可能であり、しかも異メーカ・新旧工作機械に適用可能な工作機械内衝突防止システムを開発しました。

従来の衝突防止は、(1)工作機械シミュレータ、(2)最新オープンNC装置搭載型衝突防止機能、および(3)切削負荷電流監視などの方式がありますが、(1)(2)は、事前に作成したモデルに基づく処理ため、現場の段取り間違いなどに起因する衝突回避が困難、(3)は、高容量スピンドルなどでは、検知が困難などの課題があります。

そこで本研究では、これらの方式とは異なり、現場のワークやジグ形状を、直接、適時計測し、NC装置と連携して、衝突予測を行う方式を考案しました。また、本方式では、NC装置との接続に、ORiNを活用しているため、最新のオープンNC装置のみならず、従来型NC装置でも適用可能であり、工場内に未だ数多く在る旧型工作機械にも適用できます。

平成19年度は、本方式に基づく、工作機械内衝突防止システムの実装仕様を詳細化し、関連特許を出願しました。また、詳細化した実装仕様に基づく工作機械内衝突防止システムのプロトタイプシステムを開発しました。

工作機械内衝突防止システムの表示例
図2 工作機械内衝突防止システムの表示例

2.予想される事業実施効果

シミュレーション技術やその利用の高度化の研究

本研究の効果として、産業界では生産システムの構築時間短縮が至上命題であり、開発した事前評価技術はその解決策の一つであると考えています。また、本技術は、標準化技術ORiNやHLAを応用し開発しており、汎用性が高いシステムを提案している特徴があります。本技術は、数社が実際の導入の検討中で、海外からの問い合わせも増えています。また、開発した技術は、産業界等との共同研究(製造科学技術センター主催のIMSアイデアファクトリー、幣所主催の基盤的生産技術研究会等)において、導入を含めた検討を実施しています(6社、6大学参加) 。産業界からの依頼技術講演(4件,参加者約300名)を実施し、また、学会での解説記事(2学会)が掲載され、普及活動を活発化しています。

安全・高利便性運用支援技術の研究

本研究では、関連要素技術や応用製品の普及を目指す基盤的生産技術研究会 標準技術活用ビジネス小研究会が、本年度38回開催され、延べ389名の参加があり活発化しました。また、要素技術が製品化され、合計5社8種類の関連製品を、システムコントロールフェア2007、2007国際ロボット展に出展しました。さらに、成果を教材にしたセミナーを2回行い合計48名の参加がありました。また、関連製品の一部は、ユーザへの導入が進んでおります。

一方、企業4社から本工作機械内衝突防止システムの実用化要望があり、実用化研究会を発足しました。

3.本事業により作成した印刷物等

論文発表など

No   論文名 発表者名 発表先 年月日
1 (査読論文) Enhanced distributed simulation using ORiN and HLA 日比野浩典他2名 Mechatronics for safety, security and dependability in a new era, 2007, 261-264. H19.4.1
2 (査読論文) Simulation Environment Synchronizing Real Equipment for Manufacturing Cell 日比野浩典他2名 Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing, Vol. 1 (2007) , No. 2, 238-24. H19.4.15
3 (解説記事) 工場内ネットワークによる情報活用の方法 木村利明 精密工学会:精密工学会誌 Vol. 73 No. 8 2007 888-892 H19.8
4 (解説記事) 生産システム構築効率化のためのネットワークミドルウエアを利用するシミュレーション技術 日比野浩典 SICE(計測自動制御学会):計測と制御 Vol46 No.7 540-545 H19.7
5 (査読論文) Simulation environment for manufacturing cell to support full production performance at product launch 日比野浩典 EUROSIM2007 H19.9.14
6 (解説記事) 生産システムの設計と実装を支援するネットワークミドルウェアを利用するシミュレーション技術 日比野浩典 電気学会 研究会資料 システム・制御研究会SC-07-25 P27-32 H19.10.30
7 (査読論文) Development of a Portal Collaboration Type Operation and Maintenance Support System 木村利明他2名 The 4th International Confernce on Leading Edge Manufacturing in 21st Century H19.11.8
8 (特許出願) 特願2007-341038 工具衝突防止装置、工具衝突防止方法、およびNCプログラム 木村利明
岡部信孝
神田雄一
特許庁 H19.12.28
9 (新聞発表) 遠隔監視・保守支援システム 動画・CGで設備情報 木村利明 日刊工業新聞社 H19.12.20
10 (特許審査請求) 特許公開2006-343817 動作状況管理システム及びプログラム 木村利明 特許庁 H20.1
11 (査読論文) Development of an Information-interoperable Environment Based on Open Technologies for Lean Production Systems 木村利明
手塚博久
神田雄一
Lean Business System and Beyond, IFIP H20.2.7

口頭発表など

No 発表題名 発表者名 発表先 年月日
1 (講演会) 標準化指向のネットワークを利用する生産システム構築の効率化のためのシミュレーション技術 日比野浩典 第15回産業用バーチャルリアリティ展 H19.6.27
2 (講演会) 標準技術を用いた機械の監視・保守技術 木村利明 東洋大学主催 先端技術セミナー H19.5.8
3 (展示会) 標準化指向のネットワークを利用する生産システム構築の効率化のためのシミュレーション技術 日比野浩典 第15回産業用バーチャルリアリティ展(リアルビズ社ブース) H19.6.27
4 (講演会) 生産現場で利用する3次元設備シミュレーション 日比野浩典 IMSアイデアファクトリー総会 H19.7.3
5 (講演会) アプリケーション部会の活動紹介(ORiN協議会と基盤的生産技術研究会共同による競輪補助事業成果の応用研究の紹介) 木村利明 ORiN協議会主催,基盤的生産技術研究会協賛 2007ORiNミーティング H19.8.28
6 (口頭発表) Simulation environment for manufacturing cell to support full production performance at product launch 日比野浩典 EUROSIM2007 H19.9.14
7 (口頭発表) 標準技術を活用した工作機械内衝突防止システムの開発(第1報)工作機械内衝突防止システムのコンセプト 木村利明
岡部信孝
神田雄一
2007年度精密工学会秋季大会学術講演会 H19.9.14
8 (口頭発表) 標準技術を活用した工作機械内衝突防止システムの開発(第1報)工作機械内衝突防止システムのコンセプト 岡部信孝
木村利明
神田雄一
2007年度精密工学会秋季大会学術講演会 H19.9.14
9 (口頭発表) マルチメディアコラボレーションによるリモートメンテナンスシステムの構築(第3報)コラボレーション機能の統合による動作検証 井上貴博
木村利明
神田雄一
2007年度精密工学会秋季大会学術講演会 H19.9.14
10 (口頭発表) 生産システムにおける製造実行と機器制御との密な情報統合(第6報)MESX-ORiNゲートウェイの開発 小松原宏祐
佐藤愛美
木下守克
木村利明
2007年度精密工学会秋季大会学術講演会 H19.9.14
11 (講習会) IT活用によるNC加工と工作機械の稼動監視実習セミナー 木村利明 (社)日本機械学会主催 産学連携製造中核人材育成事業 H19.9.27
~9.28
12 (口頭発表) 生産システムの設計と実装を支援するネットワークミドルウェアを利用するシミュレーション技術 日比野浩典 電気学会 システム・制御研究会 生産システムのプラットフォーム H19.10.30
13 (展示会) 工場内の全ての機器接続とMES化 木村利明他 システムコントロールフェア2007(ORiN協議会出展主催,基盤的生産技術研究会協賛) H19.11.13
~11.16
14 (口頭発表) Development of a Portal Collaboration Type Operation and Maintenance Support System 木村利明
井上貴博
神田雄一
The 4th International Confernce on Leading Edge Manufacturing in 21st Century H19.11.8
15 (口頭発表) System design and implementation for sustainable manufacturing by simulation as front-loading technology 日比野浩典 IMS 2nd Europe-Japan Collaborative R&D Workshop(スイス・チューリッヒ) H19.11.9
16 (口頭発表) 生産システムの設計と実装を効率化するネットワークミドルウェアを利用するシミュレーション技術開発 日比野浩典 Witnessユーザミーティング(伊藤忠テクノサイエンス主催) H19.12.5
17 (展示会) 工場内の全ての機器接続とMES化 木村利明他 2007国際ロボット展(ORiN協議会出展主催,基盤的生産技術研究会協賛) H19.11.28
~12.1
18 (口頭発表) ORiN活用による生産システムの可能性の拡大 大寺信行
榊原聡
木村利明
SICE(計測自動制御学会)システムインテグレーション部門 講演会 H19.12.21
19 (口頭発表) ORiNを活用したO&Mサポートシステムの開発 木村利明
井上貴博
神田雄一
SICE(計測自動制御学会)システムインテグレーション部門 講演会 H19.12.21
20 (口頭発表) MESX-ORiNゲートウェイシステムの開発 木下守克
樋爪裕次郎
小松原宏祐
佐藤愛美
鈴木利典
犬飼利宏
下谷幸久
林衞資
入江功
田口方昭
伊崎達也
宮部昇一
田村隆二
木村利明
SICE(計測自動制御学会)システムインテグレーション部門 講演会 H19.12.21
21 (講習会) 標準技術の工作機械適用実習セミナー 木村利明
犬飼利宏
宮部昇一
田口方昭
下谷幸久
樋爪裕次郎
基盤的生産技術研究会 標準技術活用ビジネス小研究会 H20.1.18
22 (口頭発表) 生産システムを効率化するシミュレーションの動向と最新技術の紹介 日比野浩典 生産システム効率化セミナー(ソフトピアジャパン主催) H20.3.6
23 (口頭発表) 標準技術を活用した工作機械内衝突防止システムの開発(第3報)-工作機械内衝突防止システムのプロトタイプシステムの開発- 岡部信孝
木村利明
神田雄一
2008年度精密工学会春季大会学術講演会 H20.3.19