三次元塑性加工システムの開発(平成17年度研究概要)
1.実施内容
近年、地球環境問題に対応した、軽量・高強度でリサイクル可能な工業製品が望まれています。これに応えるため、強度が高く軽量でリサイクル容易な、中空アルミ管材等の高精度三次元曲げ加工技術の確立が期待されています。しかし、現在市販されている曲げ加工機は、配管(円管)の単純曲げ(二次元曲げ)や、単純曲げを順次組み合わせた複合曲げを行う機種が大部分であり、複雑な三次元形状が要求される、自動車部材や精密部品の加工機としては能力が十分ではありません。また手動、半自動の専用加工機がほとんどであり、全自動(NC)化された汎用加工機は少なく、熟練者の経験や勘に頼る部分も多いことが問題として挙げられます。
今回提案する三次元塑性加工システムによるチューブベンディング技術は、これまで当所で研究開発を進めてきたパラレルメカニズム技術の特長を生かし、簡単な操作でねじり形を含む多彩な三次元曲げ加工が可能な、汎用NC加工システム(アルミ、鋼、SUS、マグネシウム管材、円管:Φ~20mmおよび異形管:□~20mm、繰り返し曲げ精度±0.05mm)の実現を目指すものです。
平成17年度は三次元曲げ加工機(ハードウェア)の試作を行いました。平成18年度は三次元CADシステムに対応した専用CAMシステム(ソフトウェア)の開発を行う予定です。
試作システムの概要(パラレルメカニズムを用いた曲げ加工機の目標仕様)
- 駆動方式:パラレルメカニズム(6自由度:X,Y,Z,PTCH,ROLL,YAW)
- 曲げ加工データ作成:専用CAM,オンライン計測による自動補正(平成17,18年度開発予定)
- 加工機仕様
- 加工精度:±0.05mm(従来機は,±1mm~)
- 制御方式:NCによる全自動運転(従来機は半自動,手動)
- 管材形状:円管,異形管とも可(従来機は,形状に制約が多い,円管が主流)
- 加工対象:アルミ管,SUS管,マグネシウム管
- 加工形状:単純曲げ(二次元),複合曲げ(三次元),三次元任意形状
(従来機は,単純曲げ,複合曲げのみ,複雑な三次元形状の加工は不可)
図 パラレルメカニズムを用いた曲げ加工機
2.予想される事業実施効果
本研究のような全自動三次元曲げ加工機が実現できれば、自動車産業等をはじめ、さまざまな産業での利用が想定されます。さらに本技術と他技術を組み合わせた多くの複合加工への適用も考えられます(例:ハイドロフォーミング、バルジ加工等の前処理での曲げ加工)。現在、企業数社から、本加工機による三次元曲げについて問い合わせがあり、強度が高く軽量でリサイクル容易な、中空アルミ、マグネシウム管材等の、三次元曲げ加工技術を確立したいという産業界のニーズは高いと考えられます。今後、共同実験、サンプル加工品の提供などにより、具体的な市場ニーズにマッチした、研究成果の普及推進を行う予定です。
3.本事業により作成した印刷物等
(1)報告書
<KSK-GH17-2> 生産機械機能高度化に関する研究(平成18年3月)
(2)口頭発表論文・誌上発表
- 五嶋裕之、一柳健「パラレルメカニズムの技術を用いた三次元曲げ加工機」、フルードパワーシステム、Vol36、No6、6-20、日本フルードパワーシステム学会
- 五嶋裕之「パラレメカニズムを応用した新しい加工機の開発 -三次元曲げ加工機開発事例-」、電気通信大学、日本機械学会2005年度年次大会先端技術フォーラム(H17/9/21)