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「日本が世界に貢献できること ―強みを活かす官民の半導体視座―」

機振協シンポジウム「日本が世界に貢献できること―強みを活かす官民の半導体視座―」(半導体研究会中間成果報告会) 開催報告
開催日時 2024年3月12日(火) 13:30ー16:30
場所 機械振興会館B2Fホール および WEBシステムにより開催
テーマ 「日本が世界に貢献できること ―強みを活かす官民の半導体視座―」
講師 株式会社eコンセルボ代表取締役社長 福田秀敬氏、東京大学大学院工学系研究科特任教授 星野岳穂氏、一般社団法人電子情報技術産業協会常務理事 平井淳生氏、一般財団法人機械振興協会経済研究所特任フェロー 井上 弘基ほか
内容 主催:一般財団法人機械振興協会 経済研究所
共催:独立行政法人経済産業研究所(RIETI)
後援:一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)


■開会挨拶

一般財団法人機械振興協会経済研究所 前所長 林 良造 氏


■Part 1 「研究会中間報告:過去振返りと今後に向けて」

一般財団法人機械振興協会経済研究所 特任フェロー 井上 弘基


■Part 2 「ミニトーク ―強みをさらに伸ばしつつ、伏在する課題に対処―」
(1)強み半導体のその先に伏在する課題

ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 執行役員 大野 圭一 氏 
電子情報技術産業協会 半導体部会 部会長(株式会社東芝) 亀渕 丈司 氏

(ファシリテーター)一般社団法人電子情報技術産業協会 常務理事 平井 淳生 氏

(2)装置・材料のさらなる発展にむけての課題等

Cdots合同会社 共同創業者(前JSR株式会社 名誉会長) 小柴 満信 氏
東京エレクトロン株式会社 コーポレイトイノベーション本部 技術マーケティング部長 早川 崇 氏

(ファシリテーター)東京大学大学院工学系研究科 特任教授 星野 岳穂 氏


■Part 3 「総合ディスカッション  ―ディマンドチェイン視点の

強調からみた日本―」

株式会社デンソー 技術企画部 シニアアドバイザー 篠島 靖 氏
インテル株式会社 執行役員 経営戦略室 室長 大野 誠 氏
新光電気工業株式会社 執行役員 開発統括部長 荒木 康 氏

Part2登壇者も参加

(ファシリテーター)株式会社eコンセルボ 代表取締役社長 福田 秀敬 氏


■閉会挨拶

一般財団法人機械振興協会経済研究所 所長、独立行政法人経済産業研究所 所長 森川 正之


【開催の概要】
2024年3月12日(火)に機械振興会館B2ホールならびにWEBシステムにて(一財)機械振興協会経済研究所および(独法)経済産業研究所(RIETI)の共催、(一社)電子情報技術産業協会(JEITA)後援による機振協シンポジウム 半導体研究会中間成果報告「日本が世界に貢献できること―強みを活かす官民の半導体視座―」を開催しました。 開催当日は、会場で39名、オンラインで139名、計178名の方々にご参加いただきました。ご参加いただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。

【開催挨拶】
一般財団法人機械振興協会経済研究所前所長 林良造氏より、半導体産業は経済成長の中核として、また経済安全保障の焦点としても経済政策の中心的地位を占めるに至っており、この機会に過去の歴史を振り返り、経験に学び進化を求めていく意義が述べられた。

【Part 1 研究会中間報告:過去振返りと今後に向けて】
機械振興協会経済研究所特任フェロー 井上弘基より、シンポジウム全体を貫く「問い」の視点として、日本の半導体産業に関し1980年代のDRAM主導の世界的位置づけを“基準点”に考えることは適切か?という指摘、現在の日本半導体産業には未だに強みを有している分野が存在するという示唆、メーカーなどサプライサイドの持つ強みとデマンドサイドをどう結び付けるかが重要だとの視点が述べられた。
【Part2 ミニトーク ―強みをさらに伸ばしつつ、伏在する課題に対処―】
 Part2-(1)では、一般社団法人電子情報技術産業協会常務理事 平井淳生氏によるファシリテートのもと、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社執行役員 大野圭一氏、電子情報技術産業協会半導体部会部会長(株式会社東芝) 亀渕丈司氏より報告が行われた。
 まず、平井淳生氏より日本の半導体産業においては産業用スペシャリティ半導体、とりわけパワー半導体とイメージセンサーにおいて日本企業が強みを有している点が述べられた。また、大野 圭一氏よりソニーセミコンダクタソリューションズ社の紹介があり、強みは長期的視野に基づく開発体制で、主力製品のイメージセンサーは、ソフトウェア面の強化でセンシング領域に参入するが、人材育成が課題であるとした。また亀渕丈司氏より、日本半導体産業の強みと課題が報告され、イメージセンサー、メモリ、アナログ、マイコン、パワー半導体といった分野に強みを有する日本半導体産業だが、それは日本メーカーの顧客対応、信頼性、すり合わせ能力、技術蓄積などに支えられているとした。強みを伸ばすためには政府の支援のみならず、製造装置・部素材メーカーの存在、内外連携、人材育成などが必要で、JEITA半導体部会でも産学官連携など各種人材育成支援に取組んでいると報告があった。最後に、化学など周辺分野の専攻人材や女性など人材を多様化し半導体産業を盛上げたい、理系志望学生の母数増加に小・中学校での取組みが重要との指摘があった。
 Part2-(2)では、東京大学大学院工学系研究科特任教授 星野岳穂氏のファシリテートのもと、Cdots合同会社共同創業者(前JSR株式会社名誉会長) 小柴満信氏、東京エレクトロン株式会社コーポレイトイノベーション本部技術マーケティング部長 早川崇氏より報告が行われた。
まず、星野岳穂氏より、日本は半導体製造装置・材料と後工程の技術的競争力は強いが人材育成が課題で、最先端EUVでは欧州、汎⽤製造装置では韓国、中国との差が縮まりつつあり、微細化の物理的限界が迫るなか新しい材料・装置・プロセスの開拓が求められ、配線や電極等の非Si系移行に伴う材料の需要低下への対応も必要な点、装置開発でのシミュレーション技術、材料設計でのマテリアルインフォマティクスの両者が重要との認識、ナノインプリントリソグラフィ、ミニマルファブ等の日本独自のユニークな製造装置を育てる意義が述べられ、他方でこの分野での政府の支援の不足、海外企業との連携強化への再考の必要性が述べられた。小柴満信氏は、現代世界はグローバリゼーションが終焉した“戦時下”にあり経済・技術が“武器化”される状況との認識を示した。また、コンピューテーションが国力には最重要とすると、日本は電力供給が弱点でサプライチェーンの確保が課題となる点、グローバル市場が変革する状況で従前の強みをそのまま生かす困難性を指摘した。早川崇 氏は、円安下では技術的優位性が世界シェア獲得に不可欠であり、学生対象の人材育成では新たな研究テーマが生まれる仕組みでなければ海外との議論に発展しないこと、ある工程で一社独占状態になると研究開発スピードが遅くなる問題を挙げた。最後に小柴氏より、部品メーカー、原料メーカーといったサプライチェーンの広さこそが日本の半導体産業を支える重要な要素であることが述べられた。
【Part3 総合ディスカッション  ―ディマンドチェイン視点の強調からみた日本―】
Part3は、株式会社eコンセルボ代表取締役社長 福田秀敬氏のファシリテートのもと、Part2の登壇者に加え、株式会社デンソー技術企画部シニアアドバイザー 篠島靖氏、インテル株式会社執行役員経営戦略室室長 ⼤野誠氏、新光電気工業株式会社執行役員開発統括部長 荒木康氏の計8名が登壇して行われた。
 まず、福田秀敬氏より議論の視点として、半導体産業のみではなく、コンピューティング技術や関連産業、金融にも視野を向ける必要性、グローバルなサプライチェーンの中で日本企業が持つ良いポジションが、ディマンドチェイン、特にAIやコンピューティングに対する、そして理系人材への投資が限定的なため、今後の継続性に課題がある点、国家間対立によるグローバル化の変局、環境問題、微細化の限界や熱対策といった技術的課題、インターネットやAIによって先進国が囲っていた技術が世界中に拡散する状況などが述べられた。
 次に篠島靖氏が、自動車産業においては、車両電動化にはパワー半導体、一般車両制御には一般LSI、自動運転には先端LSI(SoC)の3種類が重要であり、パワー半導体では海外メーカーに依存するシリコンカーバイド(SiC)の安定的確保が課題で、LSIでは安定供給のためのビジネスモデルが必要なこと、先端LSIでは自動運転の実用化に向けカスタム化が容易なチップレット技術の形成が必要であることを述べた。次に⼤野誠氏が、近年の半導体産業においてはサステナビリティ、地政学的リスクの軽減、AI時代に向けたコスト最適化と豊富な選択肢が重要で、国内の素材・装置サプライヤーや研究機関と連携などのインテルにおける対応策の事例を説明した。荒木康氏は、近年の半導体産業における微細化技術の鈍化、開発コストの増大、データセンターにおける電力消費量の増大といった課題に対し、新光電気工業では半導体のパッケージング技術を通じ、チップレットの導入、ガラスコアを用いた基盤の大型化への対応などの解決方策を提供していると紹介した。
 次に、ファシリテーターの福田秀敬氏より、登壇者に向けて「我々が迎えている変曲点とはなにか、それにどう対応するか?」という質問がなされ、イメージセンサー業界ではセンシングへの拡張が変曲点でソフトウェアとの融合で対応、世界情勢の変化という変曲点ではマーケティング等の対処が必須、2030年代に迎える量子コンピューティング技術の変曲点にはデジタル赤字の解消や政府主導の先端コンピューティング市場形成が必要、半導体製造装置業界での3次元実装が実用化されるなかコスト低下が重要、自動車業界では車載プログラムを無線通信で書き換えるOTA技術の出現により自動車に将来のアップデートに対応できる電子機器搭載が必要、世界的な分断をサプライチェーン側で乗り越えていくこと、将来到来する分散型コンピューティングの時代でのコストやエネルギーの問題、基盤の大型化やデザイン難度の上昇に伴う製造コスト増大など様々な論点が挙げられた。
 また「次世代の半導体産業を担う人材に対するメッセージは何か?」という問いに対し、若年層に対して業界をあげて半導体産業の魅力を発信していくことの重要性が挙げられる一方で、半導体で世界を変えるという意気込み、大局的な視野、野心をもってほしいとの次世代への希望も語られた。また、ベンチャー企業で企業の経営ノウハウが分からず苦労する若年者が多いことから、経験者が若年者と共にビジネスをすることで、経験者も活躍する可能性も述べられた。
 質疑応答では、①自動車産業におけるCASEの進展、自動運転技術の発展には、車載用の小型で高性能かつ安価な半導体が必要になっていくこと、②開発拠点のグローバル化に伴って雇用の流動化が進展すること、雇用の流動化は経済の活性化に重要であり、そのための制度的支援が必要であること、③女性の雇用を拡大することで、デジタル人材、半導体関連産業の人材不足に対応する必要があること、男女問わず技術者を増やすためには教育課程における文理選択に柔軟性を持たせる必要があること、④Rapidus社が2027年に2ナノ半導体量産を成功させるには内需の存在が重要であることなどの話題が上がった。
【閉会挨拶】
一般財団法人機械振興協会経済研究所所長、独立行政法人経済産業研究所所長 森川正之 より、半導体産業への政府の積極的な支援や、機械工業の多くが政府による積極的な産業政策を望ましいと評価していることを述べつつ、閉会の挨拶をした。