経済研究所
研究会・イベントのご報告 詳細
製造業を巡る環境変化～課題と対応の方向性～
| 第426回STEP研究会のご報告 | |
|---|---|
| 開催日時 | 令和元年6月20日（木） 14:00～16:00 |
| 場所 | 機械振興会館 6階 6D-2 |
| テーマ | 製造業を巡る環境変化～課題と対応の方向性～ |
| 講師 | 経済産業省 製造産業局 総務課 総務課長 太田 雄彦 氏 |
| 内容 | 6月20日（木）に機械振興会館において、「製造業を巡る環境変化～課題と対応の方向性～」をテーマに、経済産業省 製造産業局 総務課 総務課長の太田 雄彦 氏を講師に迎え、第426回STEP研究会を行いました。当日は約20名の皆様に足を運んでいただきました。ご参加いただいた皆様には、厚く御礼申し上げます。 以下は太田氏による講演の様子と、その内容を簡単にまとめたものです。製造業に携わる方々に広くご参考となれば幸いです。 【講演内容】 本講演では『2019年版ものづくり白書』の内容を一部紹介しながら、まず平成の日本の製造業を振り返り、その後昨今のものづくりをめぐる現状や環境変化を考察した上で、それに応じた戦略が示された。 まず、平成30年間の国内製造業はバブル崩壊を皮切りに、リーマンショックや東日本大震災など、多くの困難に直面した。その中で部素材を中心に強みを発揮してきた。このほか、2000年代初頭まではアジア新興国の成長に伴う国内の「産業空洞化」への危機感が強かった一方で、近年は国内回帰の動きもみられること、また大地震や豪雨など多くの自然災害に見舞われたことで、サプライチェーン全体への意識が高まり、対策が強化されつつあることなども指摘された。 こうした中で国内製造業の現状に関しては、緩やかな回復が続くものの、今後の見通しには弱さがみられること、また人手不足が深刻化していることが述べられた。とりわけ、品質トラブルが発生する企業では、従業員の教育不足などが要因として挙げられていた。 その上で、現在の日本の製造業が直面する危機として、以下の４点が挙げられた。
①人材の量的不足に加え、質的な抜本変化に対応できていないおそれ ②従来「強み」と考えてきたものが、変革の足かせになるおそれ ③経済社会のデジタル化等の大変革期を経営者が認識てきていないおそれ ④非連続的な変革が必要であることを認識できていないおそれ 一方、世界の状況を見ると、以下の３つの潮流が指摘できる。
①第四次産業革命の進展
…ビッグデータやIoTを活用した新サービスの展開や業種間連携など、新たなビジネスモデルの誕生
②グローバル化の進展と保護主義の高まり
…グローバル化の一方で米中対立や英国のEU離脱などの動き→グローバルなサプライチェーンにおけるリスク管理の重要性増大
③ソーシャルビジネスの加速
…環境問題・社会問題への取組みが社会的関心事になり、ビジネス上のリスク／機会として投資家も関心 こうした環境下、日本の製造業はエレクトロニクス系で売上高・世界シェアともに低下している一方、自動車および部素材では売上高・世界シェアがともに上昇した。ただし、MaaS（Mobility as a Service）に代表されるように、従来のものづくりの世界に新たな顧客価値提供の動きがあり、異業種からの参入もみられており、これまでと同じものづくりを続けるだけでは今後の成長は厳しい。 国内・世界の経済および製造業が上記のように変化する環境下において、国内企業の動きを見ると、大きな環境変化を見込む企業ほど、研究開発や設備投資に積極的で、業績も良いことが分かっている。また、製造工程で収集したデータを活用し、工程改善に取り組んでいる企業も増加している。ただしそれをマーケティングに活用するには至っていないのが現状で、太田課長からはいくつかの先進事例も示された。 さらに、①社会的課題の解決に向けた投資機運の高まりから、地球温暖化やプラスチックごみ規制が大きな変化を与えるとしながらも、それをビジネスチャンスとして捉えている企業が全体の３割以下にとどまること、②ものづくりとAI・IoTを組み合わせることのできるスキルを持った人材の確保が課題であり、そうしたスキル人材が活躍できる環境の有無がデジタル化の成否を分けること、③職人技を含む高い品質・技術力を裏付ける良質なデータが存在するうちに将来を見据えた対策を行うことが急務であり、とりわけ中小企業で技能のデジタル化に対するニーズが強いことなどの展望が示された。  約20名のご参加がありました。誠にありがとうございました。  林良造 機械振興協会経済研究所所長 による開催の挨拶  経済産業省 製造産業局 太田 雄彦 総務課長 による講演の様子  質疑応答の様子。複数の質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。 |
