研究会・イベントのご報告 詳細
地方の中小ものづくり企業が世界に飛躍する
第424回STEP研究会のご報告 | |
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開催日時 | 平成30年9月10日(月) 13:30~15:30 |
場所 | 機械振興会館 6階 6D-3 |
テーマ | 地方の中小ものづくり企業が世界に飛躍する |
講師 | 同志社大学商学部 教授(同志社大学中小企業マネジメント研究センター長)/機械振興協会 経済研究所 特任研究員 関 智宏 氏 |
内容 | 9月10日(月)に機械振興会館において、「地方の中小ものづくり企業が世界に飛躍する」をテーマに、同志社大学商学部教授で機械振興協会経済研究所特任研究員でもある 関 智宏 氏を講師に迎え、第424回STEP研究会を行いました。当日は20名弱の皆様に足を運んでいただきました。ご参加いただいた皆様には、厚く御礼申し上げます。 以下は関先生による講演の様子と、その内容を簡単にまとめたものです。海外展開を検討されている企業の方々、またそうした企業の海外展開を支援されている方々にとってご参考となれば幸いです。 【講演内容】 地方中小企業は経営の維持・拡大において、現在成長しており、また今後も大幅な経済発展が見込まれるアジアへの進出など、国際化が一つの有効な手法であると考えられる。こうした中小企業の国際化の実践に関しては、以下の3つのポイントがある。 ①進出先の国・地域が新興諸国である→新興諸国ゆえの課題が存在する ②いきなり直接投資を行う→高いレベルでの様々な意思決定が求められる ③成長発展の初期段階に留まることが多い→二国籍企業が多く、多国籍化は困難 これらのポイントを踏まえ、本講演ではタイを事例として、日本の中小企業の国際化について論じられた。 まず、ASEAN各国の1人当たりGDPは、シンガポールのように日本を上回る国も存在するものの多くの国は日本よりも圧倒的に小さい。しかし、タイの首都であるバンコクは大都会と言え、洗練されたデパートも存在するくらい発展している。そうした中で、いま日本企業がタイに進出する理由として、以下の3点が挙げられた。 ①日系企業の集積:3600社以上が事業を行っている ②事業のしやすい環境である:Doing Businessのランキングで26位(日本は29位) ③日本人居住者の多さ:都市別では世界第5位 一方、地方出身者が地方に戻って農園で就業するケースも多いことなどから、労働者の確保が困難になりつつある現状も指摘された。そこで、労働者確保のためには仕事に対する満足度を高めることで、離職率を下げることが重要であるとされた。 満足度の高いタイ人ワーカーの特徴は、①経営への参画意識が強い、②自身の労働に対する承認欲求が強い、③労働条件の能動的な選択意識が強い、④人材育成への意識が強い、⑤職場内のコミュニケーションへの要望が強い、の5点に整理されることが示された。これらのポイントは日本人ワーカーの特徴と類似しているように思われるが、タイ人ワーカー特有の性質・文脈に基づいたマネジメントが必要である。 続いて、タイに進出した企業の事例を紹介した。その一例は、名古屋市の企業がタイ東部の拠点を活用しつつ、タイの余剰生産分をカンボジアで生産するというものであり、この場合はASEAN内での国際分業を活用していた。 また大阪府八尾市の企業の事例は、タイの同業種の大手企業と合弁企業を設立するものである。この事例では、タイの企業が持つタイローカル企業を中心顧客とした経営から、日本の技術を導入することで品質を上げ、日系企業の顧客開拓を目指していた。 最後にAFTA(ASEAN自由貿易地域)、さらにはASEANと各国・地域間でのFTA発効の動向を踏まえ、タイが中国やインドといった、合わせて20億人以上にものぼる巨大市場への輸出拠点となることが示された。とりわけ、対インド輸出の海路に関しては、現在バンコクからマレー半島を迂回し、マラッカ海峡を経由しているが、将来、仮にバンコクの西約250kmにあるミャンマー南部のダウェイ港へと高速道路が通じることになれば、リードタイムは半減するとされており、今後のさらなる発展も期待される。 こうした状況を踏まえ、地方の中小ものづくり企業が世界に飛躍するため、以下の3点が重要なポイントであるとした。 ①国際社会での「国際」企業へ
従来のような国内での外国人活用=「内なる」国際化から「国際」企業への転換を進める。その際に、単なる低賃金利用ではなく、企業成長の機会にする。
②「アジア企業」を目指す
日本では無名という状況から、(日本ではなく)アジアでのブランドを構築し、サプライヤー・システムの一端を担うだけの存在から脱却する。また、2国籍企業ではなく、タイを第三国への輸出拠点にするなど、「多国籍」企業を目指す。
③ローカル・コミュニティとの共創
「日本村」にとどまらず、相手国の企業・政府とパートナーシップを築く。 結びとして、ニーチェの「過去が現在に影響を与えるように、未来も現在に影響を与える」という言葉を引用して地方中小企業へのエールを送り、講演は終了した。 20名弱のご参加がありました。誠にありがとうございました。 寺田範雄 機械振興協会副会長 兼 経済研究所所長代理 による開催の挨拶 同志社大学商学部 教授(同志社大学中小企業マネジメント研究センター長)/機械振興協会 経済研究所 特任研究員 関 智宏 氏 による講演の様子 会場からの質問に答える 関 智宏 先生 |