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中小企業の人手不足と人材育成
第423回STEP講演会のご報告 | |
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開催日時 | 平成30年8月16日(木) 13:30~15:30 |
場所 | 機械振興会館 6階 6D-4 |
テーマ | 中小企業の人手不足と人材育成 |
講師 | 松本大学 総合経営学部 教授/機械振興協会経済研究所 特任研究員 兼村 智也 氏 |
内容 | 8月16日(木)に機械振興会館において、「中小企業の人手不足と人材育成」をテーマに、松本大学総合経営学部教授で機械振興協会経済研究所特任研究員でもある兼村智也氏を講師に迎え、第423回STEP講演会を行いました。当日はお盆休みの時期にもかかわらず20名強の皆様に足を運んでいただきました。ご参加いただいた皆様には、厚く御礼申し上げます。 以下は兼村先生による講演の様子と、その内容を簡単にまとめたものです。人手不足や人材育成に悩む企業の方々、またそうした企業を支援されている方々にとってご参考となれば幸いです。 【講演内容】 少子高齢化に伴う人口減少は深刻であり、中でも地方中小企業にとっては、大企業や大都市への労働力の流出が加わり、より著しい人手不足となっている。その対応策として、2018年版の中小企業白書では生産性革命を提起しており、その一環として人材育成が考えられている。 人材育成に対する姿勢は企業の従業員規模によって異なっている。50人以上の規模がある企業では、社内に育成プログラムなどを確立している。一方、20人未満の企業はファミリービジネス的な色が強く、明確な人材育成システムがなくとも対応できている。これらに対して20~50人規模の企業では、人材育成と社員の定着に苦労する企業が多い。本講演では主にこうした企業を対象に議論している。 企業で行われるOff the Job Training(Off-JT)を通じた人材育成には、自社の経営計画書についての議論や、課題図書を読み合っての意見交換、資格取得や技能五輪参加に向けた研修などがある。しかしこれらは、経営側にとっては指導人材の不足や実施時間の確保が課題となり、従業員側にとっては集中力や参加・継続意欲の維持が課題となる。 このような課題に対し、特に従業員の意欲を高める上では、競争意識を喚起の手法として、表彰制度の導入や、周辺の企業と共同での「5S競技会」の開催といった取り組みを行う企業がある。また、新入社員の紹介や新製品の開発に関する記事を地元ミニコミ紙に取り上げてもらうなどして、親類・縁者や地域の友人・知人に伝わることで励みにしてもらう、という手法を採る企業も存在している。 一方、上記のような取り組みを通じて育成した人材に定着してもらうための取組みとしては、以下の4点が挙げられた。 (1)「適材適所」ではなく「適所適材」 職務内容や求められる資質を明確にしたうえで、それに合う人材を配置する。 (2)明るい職場環境 経営者の情報発信や、デザイナーズ・ユニフォームを採用する。 (3)経営参画・責任への意識向上 全社員の肩書に「経営」(役員・幹部・社員)をつける。 (4)Something Newへの取り組み マンネリの打破、従業員への刺激。 これらの取組みを総合すると、人材定着へのプロセスとしては給与や役職などといった処遇を改善する「処遇改善ルート」だけではなく、従業員全員が共通の目標を持つことで活気ある職場を作り出し、全員が責任を持って意欲的に職務に取り組む職場の「雰囲気改善ルート」が有効であることが分かる。したがって、「何をやるのか」よりも「どうやるのか」ということに軸足を置いたアクション・プランの立案が必要である。 結論としては、仲間意識の強い「いい会社」を作ることが人材確保において重要である。仕事に対する価値観が経済的価値から「やりがい」へと変化する中では、いかに気持ちよく頑張れるかが大切であり、そうした変化に見合った経営者側のマインド・シフトが必要となっている。 その一方で、国内で人材確保が不可能な場合には、ベトナムなど海外に現地法人を設立し、事業継承を図る企業も少なくない。技能実習生の帰国に合わせて、その国に継承会社を設けるなどの手法もあり、中には国内での事業継承を断念し、海外の継承会社に事業を一本化する企業も出てきており、中小企業の人手不足と人材育成はグローバル展開における課題でもある。 寺田範雄 機械振興協会副会長 兼 経済研究所所長代理 による開催の挨拶 松本大学 総合経営学部 教授/機械振興協会経済研究所 特任研究員 兼村 智也 氏 による講演の様子 20名強のご参加がありました。誠にありがとうございました。 |