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「モノづくり中小企業における『両利き経営』の特質と課題」

(一財)機械振興協会経済研究所主催 第470回機振協「モノづくり中小企業における『両利き経営』の特質と課題」セミナー開催報告 オンデマンド配信あり
開催日時 2024年5月21日(火)13:30-15:00
場所 WEBシステムにより開催(Zoom)
テーマ 「モノづくり中小企業における『両利き経営』の特質と課題」
講師 機械振興協会経済研究所 研究員 麻生 紘平 ※当初、講師を務める予定であった、機械振興協会経済研究所 所長代理 兼 調査研究部長 北嶋守は、当日体調不良のため欠席
内容  2024年5月21日(火)にWebシステムより、第470回機振協セミナー「モノづくり中小企業における『両利き経営』の特質と課題」を開催しました。講師は、機械振興協会経済研究所研究員の麻生紘平が務めました。当初、もう一人の講師を務める予定であった、機械振興協会経済研究所所長代理兼調査研究部長の北嶋守は、当日体調不良のため欠席となり、機械振興協会経済研究所研究副主幹の森直子がモデレーターを務めました。当日は、58名にオンラインでご参加いただきました。ご参加いただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。


【講演内容】

 本講演の元となった令和5年度の調査研究事業では、スタンフォード大学のチャールズ・オライリー教授が提唱した「両利きの経営」の概念を参考に、日本のモノづくり中小企業における「両利き経営」という独自の概念を設定し、その特質と課題を抽出することを目的とした。オライリー教授の提唱する「両利きの経営」とは、既存事業を維持しながら、変化に対応した新規事業を起こすこと、つまり「主力事業の絶え間ない改善(知の深化)」と「新規事業に向けた実験と行動(知の探索)」を両立させることの重要性を唱える経営論のことである。また、新規事業の探索の指針として「イノベーション・ストリーム」を設定している。これらを基盤としつつ、独自のモノづくり中小企業向け「イノベーション・ストリーム」を設定し、事例調査を重ねた。
 事例調査では、新事業展開のきっかけ(トリガー)や方法、体制など7つのヒアリング項目を作成し、モノづくり中小企業12社に対しヒアリング調査を実施し、本講演ではそのうち4つの事例を紹介した。モノづくり中小企業の「両利き経営」には2つのパターンがあるが、ヒアリング調査の結果を踏まえると、日本のモノづくり中小企業は、受注型の既存事業に自社製品型の新事業展開を組み合わせる“パターン2”の特質をもち、「脱下請け」指向といえるものであった。また、「両利き経営」のきっかけは経営者の個人的要因によるものが少なくないが、地域社会との関係性など多様な要因によること、また外部資源の活用が重要な役割を果たしていることが示唆された。
 一方で、モノづくり中小企業の「両利き経営」の課題については、自社製品型のビジネスモデルでは販売力が重要な経営資源であることが指摘できる。12の事例ではほとんど観察されなかった“パターン1”に必要な非連続型イノベーションも、脱炭素社会への対応など新たな課題に取り組むなかでは必要であり、AIやDXの急速な普及のなかで挑戦していく必要があることを指摘した。
 本研究調査事業は令和6年度も継続され、約1000社を対象としたアンケートの実施、“パターン1”に属する中小企業を対象としたヒアリング調査などを通じ、モノづくり中小企業が「両利き経営」に取り組みための「手引書」の作成を目指している。

 講演後は質疑応答が行われ、モノづくり中小企業の「両利き経営」の独自の視点について、研究会における「イノベーション・ストリーム」のなかの「斬新的イノベーション」の解釈などについての質問があった。また、ヒアリング事例のなかで、新規事業の芽生えに関して内的動機による事例や海外市場(特に途上国)に販路拡大した事例の有無についての質問や、モノづくり中小企業における「両利き経営」の成功要因、あるいは新規事業のための資金や人員確保についてのポイントなどについての質疑応答があった。



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【資料】