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「日本のLIB製造装置産業の可能性と課題について」

(一財)機械振興協会経済研究所主催 第462回機振協セミナーのご報告 「日本のLIB製造装置産業の可能性と課題について」
開催日時 2023年6月20日(火)13:30~15:00
場所 WEBシステムにより開催
テーマ 「日本のLIB製造装置産業の可能性と課題について」
講師 日鉄総研株式会社 サステナビリティソリューション事業部 産業・資源循環技術部 調査第一室 研究主幹 大内邦彦 氏
内容  2023年6月20日(火)にWebシステムより、第462回機振協セミナー「日本のLIB製造装置産業の可能性と課題について」を開催しました。講師は、日鉄総研株式会社サステナビリティソリューション事業部 産業・資源循環技術部調査第一室研究主幹の大内邦彦氏にお願いしました。当日は、71名にオンラインでご参加いただきました。ご参加いただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。

【講演内容】  本講演では、経済産業省の「蓄電池産業戦略」ではあまり言及されていない製造装置に注目し、車載用を始め様々な分野で蓄電池の主流となっているリチウムイオン電池(LIB)の製造装置の概要について、LIBの製造工程と併せてまず説明した。その後、LIB製造装置の市場規模、主な日本のLIB製造装置メーカー、LIB製造装置産業の日中韓比較、中韓における政府の支援策について報告した後、日本のLIB製造装置産業の可能性と課題について提示した。
 まず脱炭素化の流れを受け、世界的に蓄電池産業市場が拡大傾向にある一方で蓄電池を製造する装置については経済産業省の戦略では言及が少ないことを指摘した。次にLIB製造装置産業のうち中小企業が中心となる電極製造工程、セル組み立て工程、検査工程を対象に調査を行った旨を説明した。EV搭載用蓄電池は高いスペックが求められ、かつモデル毎に細かな調整が必要という性質から、LIBメーカーと製造装置メーカーとの細かい擦り合わせや高精度の要素技術が必要であり、日本の製造業が得意としてきた分野の強みを生かせることを述べた。また日本においては、関西地方にLIBメーカー、LIB製造装置メーカー、部素材メーカー、研究機関が集積しておりLIB製造装置メーカーにとって良好な操業環境が形成されていることを指摘した。
 日本、中国、韓国の3か国におけるLIB製造装置産業についての国際比較では、まず中国、韓国の2か国が日本の技術水準にキャッチアップしていること、大手LIBメーカーが製造装置の開発を行い、中小の製造装置メーカーに発注する日本・韓国の生産構造と異なり、中国では大企業がLIB製造装置を製造しLIBメーカーに納入しているため生産設備が大規模化していること、日本企業が特定の工程の製造装置のみ製造するのに対し中国・韓国メーカーは複数工程の製造装置を生産していること、設備投資の規模が大きいこと、欧州企業との技術開発・市場開拓目的の協力関係締結を行っていること、政府による支援策も拡充しているといった特徴を指摘した。
 このような、近隣諸国のLIB製造装置産業が日本にキャッチアップするという状況下において、日本のLIB製造装置産業は①LIB市場拡大と技術革新へのキャッチアップ、②海外市場の開拓、③中国・韓国の製造装置産業に対するベンチマーキング、④次世代LIB向け製造装置開発への早期対応、⑤政府による製造装置産業への支援制度創設、⑥製造装置メーカーによる業界団体の設立などの対応策を講じることが必要であることを指摘した。  講演後は①LIBの製造工程における脱炭素化の取り組みについては、中国企業が一貫した生産システムの構築による取り組みを通じて実現していること、②各製造装置間の連携については中国がITを使った連携で先行している一方、日本では機器間の連携が課題であること、③日本におけるLIBメーカーと製造装置メーカーの関係について設計から製造までコーディネートするコントラクターとしての商社の需要があること、④日本がLIB関連産業において海外企業との競争優位性を得るにあたって、中小企業の技術・技能を生かしながら競争優位性を獲得するためには、韓国企業の生産システムのように隣接した複数工程を一社で担うシステムを構築する、或いは企業間の連携を深めるといった方向性が考えられること、⑥知的財産の保護が必要であること、⑦LIB製造にあたっては、LIBメーカーとのすり合わせを通じたユーザーのニーズに応じたきめ細かな技術開発の点で強みが生かせることなど、活発な議論が行われ、盛況裏に終了した。


※動画・資料の掲載は終了しました。