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調査研究報告書 詳細

生産分業システムの革新と21世紀の展望

報告書No. H4−7
発行年月 : 平成5年5月




Ⅰ 主要目次
第1章 日本産業の基本構造と21世紀の生産システムの方向
 第1節 日本産業の生産構造の特色
 第2節 21世紀の日本産業の生産システムの方向と課題
第2章 機械産業を取り巻く経営環境変化と生産分業システムの構造変化
 第1節 機械産業と経営環境変化
 第2節 機械産業の生産分業システムの構造変化
第3章 21世紀の日本産業の生産システムと中小企業
 第1節 日本産業の生産構造変化要因
 第2節 地域戦略に伴う生産構造変化と中小企業
 第3節 技術革新に伴う中小企業の存立構造変化
 第4章 大手企業の生産戦略の実態-アンケート調査より-
 第5章 中小企業の生産戦略の実態アンケート調査より

Ⅱ 要約
 機械産業はまさに転換期を迎えたといえる。これまで常に成長を遂げてきた機械産業であるが、その限界点が見え始めてきたといえる。
 機械産業、中でも量産型消費財の国内市場は明らかに成熟化してきており、今後は量的な拡大ではなく一定の市場規模の中でいかに高付加価値化を図っていくかが当該メーカーにとって最重要戦略となってこよう。
 部品、中小下請企業においても当然、量的成長の制約を受けることとなり、部品や加工にいかにして付加価値を付けていくかが勝負となってこよう。また、輸出市場も完成品輸出の限界に伴う機械メーカーの現地生産化によって、必要な部品を日本から輪出するといった形で当面の市場確保、拡大が図られてきたが、部品輪出も進出先でのローカルコンテンツの引き上げ要請に対応する形で主要部品の現地調達化が急速に進められてきており、これまでのように輸出が日本国内での生産量の拡大に大きく貢献するといったことが望まれない状況となってきている。このように日本の機械産業の多くで量的拡大の限界が見え始めたといえる。
 こうした市場面での変化に加え、機械産業の多くで生産分業システムのあり方を再構築し直す動きも今後の課題として指摘できる。これまで機械メーカーの多くは自社の協カ会に加盟する部品メーカー、中小下請企業を中心に取引関係を構築してきた。しかし、成熟化した国内市場をめぐってメーカー間の競争は激化の一途をたどっており、従来の取引関係にこだわっていては競争力を確保することが難しくなってきている現実を踏まえ、他系列の開発力、価格競争力の優れた部品メーカーや下請中小企業から積極的に部品を調達していく、脱系列化の動きが活発化してきている。
 さらに競争激化の要因として日本市場に対する外圧の薄まりがあげられる。つまりボランタリープランに代表されるように、外国製自動車部品の調達拡大が政治的課題にまでなってきており、日本市場にかなりの勢いで海外から調達された部品が流入してくることが予想される。
また、日本国内における3K職種離れや若年労働力不足、また賃金上昇等を背景として自動車部品の生産基盤の弱体化を懸念する声が高まってきているが、こうした状況を補完する意味でアセアン諸国や中国に新たな生産拠点を設ける機械メーカーや協力企業が増加してきている。新規の需要拡大を求める国際化戦略、新たな生産基地を求めた国際化戦略等、世界的視野からみた経営戦略の展開の方向を見据えて日本の生産分業システムのあり方を再度見直す時期に入ったといえる。