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調査研究報告書 詳細

航空機産業クラスター形成と地域中小企業の発展戦略

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報告書No. H30-5
発行年月 : 平成31年3月



【目次】

序 章 

第1章 航空機産業の市場動向及びメーカーの取組み
    
第2章 国内の航空機産業クラスターの概要と動向

第3章 航空機産業クラスターの形成と地域中小企業の発展戦略

資料編

【概要】

 近年、わが国の機械産業に関連する産業政策では、航空機・同部品産業を成長分野として捉え、様々な支援施策が展開されている。この背景には、世界の民間航空機市場が年率約5%で増加する旅客需要を中心に少なくとも今後15年間にその市場規模は約3万機(約4兆ドル程度)に拡大し、特にアジア太平洋地域を中心に旅客需要が伸長するといった世界規模での市場拡大がある。
 こうした状況を受け、わが国でも政府が、航空機・同部品産業の強化と地域産業の活性化を目的として様々な施策を打ち出している。そうした中で、国内各地において航空機産業クラスターの推進組織が設立され、航空機産業クラスター(注)を軸にした地域中小企業の活性化への期待が高まっている。
 そこで、当経済研究所では、所内に「航空機産業クラスター形成と地域中小企業の発展戦略」をテーマとする研究会を立ち上げ、調査研究を行った。本調査研究は平成29年度に実施した航空機・部品産業と中小企業の外部連携に関する調査研究の結果を踏まえたものであり、今回の目的は、国内の航空機・部品産業における中小企業の参入状況についての検討を通じ、地域産業の活性化、すなわち、地域中小企業の活性化との関係から今後の発展戦略とそのための課題を明らかにすることとした。そのために①航空・部品産業の動向に関する文献・資料調査、②航空機産業クラスター形成に取り組んでいる主要地域(島根県、山口県、新潟県及び長野県)におけるヒアリング調査、以上の2つの方法に基づいて、国内の航空機産業クラスターの動向を具体的に分析・考察した。
 その結果、航空機産業クラスターは、活動領域の拡大にしたがって、大まかに分けると以下に示すように、「萌芽期」「成長期」「飛躍期」の3段階の発展過程を経ることが明らかになった。それぞれの段階において活動内容は異なり、活動領域の拡大に伴って、より対外的な情報発信が重要となるが、一方で航空機産業クラスターとしての情報収集や、クラスター参加企業間の情報交換は常に重要であることを示した。加えて、事例4地域を比較した結果、航空機産業クラスターとしての活動期間が長くなるほど活動領域は拡大する傾向にあるが、クラスターの実態に合わせて活動領域を徒に拡大しない戦略も有効であるという結論を得た。これはすなわち、地域中小企業の集積度や技術的特性、また航空機業界に携わる大手企業が域内ないし近隣に立地しているか否かなどといった、種々の要素によって、航空機産業クラスターが採るべき戦略も異なることを示す。
 こうした内容についてまとめた本報告書が、地域経済・産業の活性化の視点から航空機産業クラスターの形成を指向している方々にとって少しでも役に立つことを願っている。なお、本報告書内の新潟における事例をサンプルとしてこちらのページにて公開している。あわせてご参考にしていただければ幸いである。

注:「産業クラスター」の語はM.ポーターによる定義が著名であるが、本報告書における「航空機産業クラスター」は、全国で中小企業の航空機産業参入に向けて結成された組織を指し、M.ポーターとは必ずしも合致しない。