調査研究報告書 詳細
人口減少社会における自動車産業―中国地方の自動車産業集積に考える課題解決に向けた糸口―
報告書No. H30-3
発行年月 : 平成31年3月
【目次】
序 章
第1章 トヨタ=マツダ,日産=三菱自における部品調達構造の比較研究
第2章 タイにおけるマツダの現地調達戦略
第3章 山陰企業の自動車部品事業への参画
第4章 産学官金連携による地場部品企業の育成および地域活性化
補 章 群馬県太田市の自動車産業:SUBARU(スバル)の生産システム,部品調達における地場部品企業の役割
【概要】
本調査研究は,人口減少が急速に進む中国地方(山陰,山陽)を対象に,完成車メーカー2社(マツダおよび三菱自動車・水島製作所)を頂におく自動車産業集積地が,海外進出と内需減少による生産動態の変化,自動車の製品技術の変化が並進するなかで,地域経済をどのように維持していくべきか,その課題解決を検討することに主眼をおいたものである。これらの変化は,わが国の自動車産業が近い将来に直面するものである。中国地方は他地域よりも急速に高齢化が進んでいるが,他地域も同様に高齢化社会を迎えることは自明であり,深刻な労働者不足,技術者の高齢化に伴う技術・技能の伝承といった労働人口に係る問題により真摯に向き合うべきである。
そこで本調査研究においては中国地方の自動車産業の現状を分析し,今後,中国地方がどのような戦略をもって同産業に対応していくのかをひとつのモデルとして描くことを事業の目的とした。具体的には,同地域における完成車企業と部品企業,もしくは自動車関連企業と地域経済との関連性に言及し,完成車企業の戦略のもと,部品取引構造がどのように構築され,そこにはどのような変化,課題が生じているのか,そして産業活動を持続させるための産学官金連携の動きがどのような特徴をもって同地域を支えているのかを整理していくことに注力した。また,自動車産業がグローバルに展開する現在においては、完成車企業の海外展開の現状とともに,その地場企業の動向も把握する必要がある。そこでマツダが事業規模を大きくしつつあるタイの部品取引構造も可視化することに努め,同地で中国地方の地場部品企業がどのように活動を展開しているのかを言及したことも本報告書の特徴である。
本報告書では,中国地方の自動車産業集積地から抽出した課題が主であるが,補章では北関東地方の中核企業であるSUBARUに焦点をあて,中国地方の中核2社との対比を部品取引構造の視点から試みた。そこで示されたのは,トヨタに代表される大手完成車企業のそれとは異なる,中国地方の自動車産業集積の取引構造と類似する姿であった。わが国の自動車産業研究の多くは大手完成車企業を中心としたものであるが,本調査は,上述のとおり地域経済の観点からの分析に主眼をおく。補章で指摘した中国地方と北関東地方との類似点,相違点を詳細に分析し,地方の自動車産業集積地の課題を集約することにより,わが国の自動車産業の課題の本質を抽出することが可能になると考える。今後は他の自動車産業集積地にも注目することにより,わが国自動車産業の現状とその課題を抽出し,同産業全体に向けた提言を行うことが出来ると考えている。
【継続調査報告】
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