【コラム】2019米国図書館協会(ALA)年次総会参加記
2019年10月23日
機械振興協会情報創発部 結城 智里
6月にワシントンD.C.で開催されたアメリカ図書館協会(ALA)の年次総会に参加した。これは全米の図書館員だけでなく世界各国から図書館員が参加する一大イベントである。会議場では1000あまりのフォーラムが開催され、巨大な展示会場では図書館やその関係団体、企業などの展示が行われる。この総会は年1回、アメリカの大都市で開催されている。今年、日本から初めてジャパンセッションという企画で公共図書館員が発表を行った。BICライブラリは展示会場で開催されたポスターセッションに「公共図書館をターゲットとする専門図書館のサービス」というテーマで参加し、BICライブラリがこの8年間取り組んできた連携事業をポスターに作成して展示を行った。
ALA年次総会でジャパンセッションとしてフォーラムを開催するためにはいくつものハードルを越えねばならず、昨年夏から開催の準備は始まっていた。参加のための費用の一部をクラウドファンディングで募ることになった。おかげで日本の公共図書館員がALAで発表を行うということを多くの方に知っていただくことができた。
こうしたことからなんとしてもセッションは成功させたい、多くの人に参加してほしいと考えていた。日本を出発する時点で定員120名のところ100名は超えているようだということだったのでちょっぴり安心していたとはいえ、油断はできないと思っていた。
当日フタを開けてみれば大入り満員、立ち見の人がぎっしりである。立ち見の人数をざっと数えると50名以上おり、180名近く入場していることになる。中には床に座り込んで熱心にメモを取っている人もいた。このセッションの内容と盛況な様子はALA関係者でも話題となり、その後見学のために訪問した図書館でも「ジャパンセッションは素晴らしかった」という声をたくさんいただいた。
(筆者撮影)
BICライブラリが参加したポスターセッションは、展示会場の1角で90分間展示を行った。
限られた時間の中、拙い英語での対応ではあったが、BICライブラリのポスターの出来栄えがなかなか良かったうえに(自画自賛)、専門図書館横断検索の使い方として配ったしおり型の利用案内(折り畳み式)が功を奏し、見学者をキャッチすることができた。おかげで予想以上に多くの人々と交流することができた。
にぎやかだったのは台湾から来た女子大生のグループ。。お互いにあまり英語が上手ではなかったのが幸いしたのか、会話が続いた。彼女たちはコーナーに置いてあったパンフレットの一つに注目した。鳥取県立図書館の提供したパンフレットである(ジャパンセッション発表者の一人が鳥取県立図書館員)。鳥取県は2つの有名漫画の作者の出身地である。その漫画は「ゲゲゲの鬼太郎」と「名探偵コナン」であるが、鳥取県のパンフレットにはその2つのキャラが描かれているのである。特に「コナン好き、新しい映画も見た」と目を輝かす台湾女子大生たち。少年探偵は海外でも大人気なのであった。
とても立派な体格の男性。海軍で横須賀にいたことがあるという。ポスターを説明していると「war、war」という。「???」とまどっていると、「図書館戦争のことじゃない?」と教えてくれる人がいたので、確かめると正解だった。アメリカ人も知っていた「図書館戦争」(有川浩の小説に基づく日本の実写映像作品シリーズ。2013年に同名の映画第1作が公開された)。
ショッキングピンクのショートヘアに、腕にはタトゥー、まるでパンクロッカーのような風貌のダイナミックな女性が訪れた。外見とはうらはらにとてもソフトでクレバーな感じの人で、熱心に話を聞いてくれた。午後、ブース見学の時に、彼女に遭遇。なんとスミソニアン博物館のライブラリアンらしい…。
(同行者撮影)
とにかく展示場は広く、本や図書館用品以外にもたくさんの展示があった。
長蛇の列があちこちにできている。著者サイン会のようである。出版社ブースで本を購入すると整理券がもらえてサインしてもらえるらしい。コミックの出展スペースがあり、かなり広い。日本の漫画の英語版もたくさん見かけた(NARUTOとかワンピースその他いろいろ)。
3Dプリンターの業者が実演していたり、柔らかいウレタンのようなブロック状の素材のメーカーもブースを出していて、その商品を使って子どもが遊べるスペースも作ってあった。そこで子供たちが遊んでいる。会場では子供連れをたくさん見かけた。ベビーカーを押している人もいる。日本ではこうした展示会に子供を見かけることはまずないと思う。
自動倉庫のモデル展示も行っている。吹き抜けの天井近くまでそびえる機械。本を積み込んだゴンドラが上下する大掛かりなものだ。そしてイベント会場のようなブースがあり、そこにはキッチン設備がある。どのようにその場所が使われているのかはナゾのままだったが、とにかく広くて、いろいろなものがある会場だった。
Library of Congress(LC,米国議会図書館)の本館、石造りのジェファーソンビルで年次総会参加者が出席できる交流会International Librarians Receptionが開催された。LCは国会議事堂に隣接している。優美な彫刻が施された重厚なホールが会場である。他の都市で開催される場合はこのレセプションはクラブなどが会場となることが多いそうなので、良い体験ができた。最終日には館内を案内してもらい、Asia divisionでミーティングが行われた。
閲覧室には利用者しか入室できないが、ジェファーソンルーム(トーマス・ジェファーソン寄贈の書籍が置かれている)やグーテンベルグ聖書など貴重なものを見学した。すでに夏休みシーズンに入っている時期だったので、館内は夏休みの子供たちの見学グループでにぎわっていた。夏休みということで、大リーグ関連展示も行われており、イチローの大きなパネルも飾られていた。
(筆者撮影)
噂には聞いていたので、アメリカでの食事に期待はしていなかった。振り返ってみてもおいしかった!と思うのは朝食のバターミルクパンケーキ、バターミルクビスケット、中華料理、というところである。前半はジャパンセッションやポスターセッションに備えて忙しく、スーパーでパンなどを買ってきて済ませていた。
スーパーについては「トレーダージョーズ」と「ホールマート」の存在を教えられ、利用した。トレーダージョーズは安売り店であるが、チョコレートやヨーグルトなどオリジナル商品が充実しており、ちょっとしたお土産品が入手できる。非常に人気のある店で、出店要請が多いらしいが、事前調査を行い生活レベルの高い街にしか出店しないらしい。私たちが利用した支店も高級住宅街ジョージタウンにあった。トレーダージョーズの99¢のオリジナルエコバッグは地域限定のデザインのものが人気らしい。現地ガイドの日本人女性が「ワシントンのデザインはとってもかわいいですよ」と力説するので、入手した。しかし大きな鷲(アメリカの国鳥ハクトウワシ)やホワイトハウスなど、ワシントンの名所、名物が描かれているが、‟かわいい‟範疇にははいらないのではないだろうか。ところが、日本に帰ってオークションサイトを見てみるとなんと100円程度で買えたこのバッグが、1000円以上の値をつけられていた。
「ホールマート」は日本のスーパーでいえばちょうど「紀伊國屋」のような感じ。ちょっと高級でナチュラル指向のスーパーのようだ。店内で調理した軽食なども売っているが、お値段も高級で、サンドイッチが6~7ドル、にぎり寿司が18ドルと高額である。
にぎり寿司は見るからにおいしくなさそうで邦貨にすると2000円近く払って食べる気にはなれない。サンドイッチも値段に見合うとは言えない味だった。強烈なインパクトを与えたものはグループの一人が買ったおそば。「soba」と表示されているが、塩とエスニックな香辛料と油がまぶしてあり、口に入れるとぼそぼそと粉だらけになるのである。みな一口二口食べるのがやっとという惨憺たる一品だった。
前半はALAへの参加、後半はワシントンD.C.の図書館を巡る忙しい旅であったが、なによりもセッションに参加し、発信する側になれたことは貴重な経験であった。この様子についてはBICライブラリで展示を行っているので、興味のある方はぜひご来館を!
ジャパンセッション:立ち見50人以上の大盛況
こうしたことからなんとしてもセッションは成功させたい、多くの人に参加してほしいと考えていた。日本を出発する時点で定員120名のところ100名は超えているようだということだったのでちょっぴり安心していたとはいえ、油断はできないと思っていた。
当日フタを開けてみれば大入り満員、立ち見の人がぎっしりである。立ち見の人数をざっと数えると50名以上おり、180名近く入場していることになる。中には床に座り込んで熱心にメモを取っている人もいた。このセッションの内容と盛況な様子はALA関係者でも話題となり、その後見学のために訪問した図書館でも「ジャパンセッションは素晴らしかった」という声をたくさんいただいた。
ポスターセッション:コナン強し!そして図書館戦争!?
にぎやかだったのは台湾から来た女子大生のグループ。。お互いにあまり英語が上手ではなかったのが幸いしたのか、会話が続いた。彼女たちはコーナーに置いてあったパンフレットの一つに注目した。鳥取県立図書館の提供したパンフレットである(ジャパンセッション発表者の一人が鳥取県立図書館員)。鳥取県は2つの有名漫画の作者の出身地である。その漫画は「ゲゲゲの鬼太郎」と「名探偵コナン」であるが、鳥取県のパンフレットにはその2つのキャラが描かれているのである。特に「コナン好き、新しい映画も見た」と目を輝かす台湾女子大生たち。少年探偵は海外でも大人気なのであった。
とても立派な体格の男性。海軍で横須賀にいたことがあるという。ポスターを説明していると「war、war」という。「???」とまどっていると、「図書館戦争のことじゃない?」と教えてくれる人がいたので、確かめると正解だった。アメリカ人も知っていた「図書館戦争」(有川浩の小説に基づく日本の実写映像作品シリーズ。2013年に同名の映画第1作が公開された)。
ショッキングピンクのショートヘアに、腕にはタトゥー、まるでパンクロッカーのような風貌のダイナミックな女性が訪れた。外見とはうらはらにとてもソフトでクレバーな感じの人で、熱心に話を聞いてくれた。午後、ブース見学の時に、彼女に遭遇。なんとスミソニアン博物館のライブラリアンらしい…。
3Dプリンター、自動倉庫、キッチンスタジオ:展示会場
長蛇の列があちこちにできている。著者サイン会のようである。出版社ブースで本を購入すると整理券がもらえてサインしてもらえるらしい。コミックの出展スペースがあり、かなり広い。日本の漫画の英語版もたくさん見かけた(NARUTOとかワンピースその他いろいろ)。
3Dプリンターの業者が実演していたり、柔らかいウレタンのようなブロック状の素材のメーカーもブースを出していて、その商品を使って子どもが遊べるスペースも作ってあった。そこで子供たちが遊んでいる。会場では子供連れをたくさん見かけた。ベビーカーを押している人もいる。日本ではこうした展示会に子供を見かけることはまずないと思う。
自動倉庫のモデル展示も行っている。吹き抜けの天井近くまでそびえる機械。本を積み込んだゴンドラが上下する大掛かりなものだ。そしてイベント会場のようなブースがあり、そこにはキッチン設備がある。どのようにその場所が使われているのかはナゾのままだったが、とにかく広くて、いろいろなものがある会場だった。
米国議会図書館(LC): 世界最大級の図書館
閲覧室には利用者しか入室できないが、ジェファーソンルーム(トーマス・ジェファーソン寄贈の書籍が置かれている)やグーテンベルグ聖書など貴重なものを見学した。すでに夏休みシーズンに入っている時期だったので、館内は夏休みの子供たちの見学グループでにぎわっていた。夏休みということで、大リーグ関連展示も行われており、イチローの大きなパネルも飾られていた。
“かわいい“?エコバックとsoba:アメリカスーパー事情
スーパーについては「トレーダージョーズ」と「ホールマート」の存在を教えられ、利用した。トレーダージョーズは安売り店であるが、チョコレートやヨーグルトなどオリジナル商品が充実しており、ちょっとしたお土産品が入手できる。非常に人気のある店で、出店要請が多いらしいが、事前調査を行い生活レベルの高い街にしか出店しないらしい。私たちが利用した支店も高級住宅街ジョージタウンにあった。トレーダージョーズの99¢のオリジナルエコバッグは地域限定のデザインのものが人気らしい。現地ガイドの日本人女性が「ワシントンのデザインはとってもかわいいですよ」と力説するので、入手した。しかし大きな鷲(アメリカの国鳥ハクトウワシ)やホワイトハウスなど、ワシントンの名所、名物が描かれているが、‟かわいい‟範疇にははいらないのではないだろうか。ところが、日本に帰ってオークションサイトを見てみるとなんと100円程度で買えたこのバッグが、1000円以上の値をつけられていた。
「ホールマート」は日本のスーパーでいえばちょうど「紀伊國屋」のような感じ。ちょっと高級でナチュラル指向のスーパーのようだ。店内で調理した軽食なども売っているが、お値段も高級で、サンドイッチが6~7ドル、にぎり寿司が18ドルと高額である。
にぎり寿司は見るからにおいしくなさそうで邦貨にすると2000円近く払って食べる気にはなれない。サンドイッチも値段に見合うとは言えない味だった。強烈なインパクトを与えたものはグループの一人が買ったおそば。「soba」と表示されているが、塩とエスニックな香辛料と油がまぶしてあり、口に入れるとぼそぼそと粉だらけになるのである。みな一口二口食べるのがやっとという惨憺たる一品だった。
前半はALAへの参加、後半はワシントンD.C.の図書館を巡る忙しい旅であったが、なによりもセッションに参加し、発信する側になれたことは貴重な経験であった。この様子についてはBICライブラリで展示を行っているので、興味のある方はぜひご来館を!
D.C.限定のトレーダージョーズのエコバッグ(筆者撮影)
【了】
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