作動・潤滑油の環境負荷低減に関する研究
1.実施内容
建機に代表される油圧駆動システムにおいて、高強度化(出力アップ)および小形化のために、年々システムの高圧化(21MPa→45MPa)が進められています。しかし、高圧下で油中に気泡が存在すると、油の見かけの剛性が低下し、大幅なエネルギー伝達ロスが発生します。油タンクの油面からは空気が巻き込まれ、また溶存空気の析出(キャビテーション)が発生するため、作動・潤滑油には常に気泡が混入してしまうことが問題となります。このように通常の作動・潤滑油には、常に数%~10%の気泡が存在していますが、既存の技術では完全な除去が困難です。現在行われている方法は、タンク内で気泡を浮上させて自然放気除去する方法であり、そのため、必要以上に大きなタンク容量が必要とされています。また、作動・潤滑油の寿命を左右する主原因は、油中に存在する空気による酸化と熱的な劣化であることが知られています。したがって、タンク中の油中気泡を効率よく除去する手法を開発できれば、これまで両立が難しかった、油圧駆動システムの高強度化(パワーアップ)と作動・潤滑油の長寿命化を両立することが可能になります。
本研究では外部動力なしで効率良く気泡を除去できる、気泡除去技術の研究開発を行います。気泡を積極的に除去し、動力伝達効率低下の防止、低騒音化、システムの小形化と油の寿命延長、トータルメンテナンスコストの低減を実現します。また、現在気泡除去に関する性能評価手法は確立していないため、気泡除去装置の性能評価や優劣に対する指標が不明確です。このため、標準的な性能評価手法についての調査研究も同時に行います。
図1.従来技術と新技術の比較概念
2.予想される事業効果
油中気泡を積極的に除去することで、油の劣化を抑え、機器・設備ライフサイクルコスト低減など環境負荷の低減に貢献できる気泡除去技術の研究および、標準的な評価手法の実現が期待されます。実用的な気泡除去装置および評価手法を実現することで、広く産業界での利用・普及が期待できます。
3.本事業により作成した印刷物等
(1)報告書
<KSK-GH22-4-2> 生産環境のグリーン化に関する研究-作動・潤滑油の環境負荷低減に関する研究-(平成23年3月)(2.39MB)
(2)国際会議・国内学会発表
No | 題目 | 発表者名 | 発表会名 | 発表日 |
---|---|---|---|---|
1 | 環境負荷低減を目的とした油中気泡の除去 | 田中 豊 五嶋裕之 鈴木隆司 |
日本機械学会2010年度年次大会学術講演会 | H22.7.6 |
2 | BUBBLE ELIMINATION FROM HYDRAULIC FLUIDS FOR REDUCTION OF ENVIRONMENTAL BURDENS | Ryushi Suzuki,Yutaka TANAKA,Hiroyuki Goto | The 11 Scandinavian International Conference on Fluid Power(SICFP'11) | H23.5.18-20 |