補助事業 実施内容詳細
加工機械用要素性能向上
1.実施概要
工作機械テーブルの駆動装置として、いままでボールネジとモータを組み合わせて駆動していた部分が、近年ではリニアモータに置き換わるようになって来ています。ボールネジ機構ではボールネジが回転するため、直進方向以外の余分な力が発生していましたが、リニアモータでは最初から進行方向に力を発生させることが出来るため、余分な力が発生しにくく、非接触駆動が可能なことから高速移動や、精度が求められる用途などに使われています。
しかし、リニアモータは、ボールネジの様な倍力機構を持たないために、外部からの振動や加工時に発生する切削抵抗などの影響を受けやすく、単純にモータとボールネジの組み合わせと置き換えただけでは、期待された結果が得られなくなってしまいます。本研究では駆動機構と案内機構の組み合わせに着目し、リニアモータのすぐれた特徴を活かしつつ、外部からの振動に弱いと言う短所をカバーできる案内機構との組み合わせを研究しています。
平成20年度は、外部からの振動による影響を簡便に抑制出来る様、従来からある防振ゴムによるマウントに改良を加え、並列型の防振マウントを開発いたしました。
工作機械の様に比較的大きな構造をしたものは、数Hz~数百Hz程度の非常に低い振動の影響を受け易いため、薄い防振ゴムでは十分な減衰力を得ることが出来ません。また、機械重量も非常に重いことから、防振ゴムを沢山積層させても圧縮されて硬化してしまい、減衰力が低下してしまいますし、あまり沢山の防振ゴムを積層させても、不安定になり、姿勢変化が大きくなるため、加工精度の維持が難しくなってしまいます。防振ゴムの使用方法としては、機械装置の底面全体に防振ゴムを敷き詰めるのが、重量が分散されて防振ゴムの減衰効果を発揮させるのには理想的ですが、工作機械の底面は平らではない場合がほとんどですし、レベル出しという、機械を水平に調整する作業も難しくなってしまいます。
図1 従来の積層型の防振マウント | 図2 並列型防振マウント(図右側) |
図2の右側に示したのが、今回開発した並列型防振マウントで、防振ゴムは機械重量に対し並列に働く様になっています。この方法ですと、機械装置を支える場所を自由に選ぶことが出来ますし、機械装置を支える点を機械装置の周辺部にする事が出来るため、ピッチングやヨーイングと言った機械装置全体が揺動するような動きに対して、効果的に支えることが出来ます。
今回開発した、防振マウントは、それぞれの防振ゴムを仕える仕切板の固定方法が弱く、十分な減衰効果が得られませんでしたが、今後は接合方法を改良し、理論上の性能が発揮できる様にしていきたいと思います。
2.予想される事業実施効果
従来の防振ゴム製の防振マウントと同様の使用方法が出来、機械装置の姿勢安定性が高い防振マウントにより、高速移動を得意とするリニアモータ駆動機構による姿勢変化を抑制し、高精度な加工装置を安価に作成出来るようになると考えています。
3.本事業により作成した印刷物等
(1)報告書
<KSK-GH20-3> 加工技術高度化に関する研究報告書(平成21年3月) (7.50MB)