協会のお知らせ 詳細
会長新年の挨拶
あけましておめでとうございます。
皆様におかれましては、健やかに新年を迎えられたこと、お慶び申し上げます。
新しい年の始まりにあたり、今年の機械産業におけるキーワードを三つ挙げさせて頂きます。
一つ目は、IoT(Internet of Things)時代の日本の機械産業です。ご承知のとおり、現在、米国やドイツを中心に第4次産業革命と言われる産業トレンドが進行中です。例えば、GE、シスコシステムズ、AT&T、IBM、インテルが共同で設立した米国のIIC(Industrial Internet Consortium)では、サービスを起点として、様々なサービスのプラットフォームといったネットの強みをテコにロボット、自動車等のリアルな事業分野へ拡大する方法で「ネットからリアルへ」といった取り組みが行われています。また、ドイツのIndustris4.0では、モノづくりを起点として、現場の生産設備、ロボット等のリアルの強みをテコに現場データのネットワーク化を通じた新たなプラットフォームを目指す方法で「リアルからネットへ」といった取り組みが注目されています。こうした第4次産業革命に向けた各国の動きは、当然のことながらわが国のリーディングインダストリーである自動車産業を始めとする機械産業全体に大きな影響を与えることは明らかであります。2016年はIoTがより具体化・加速化される年となります。日本の機械産業もすでに取り込みつつありますが、自らの産業競争力の向上と世界展開すべく努力して行くことが大きな鍵となるものと思われます。
二つ目は、日本の超高齢社会の進展に機械産業が果たす役割です。東京オリンピックが開催される2020年にわが国の高齢者人口(65歳以上の人口)は29%以上に達します。このように世界が経験したことのない超高齢社会に向けて、機械産業は何ができるのか、それは医療・健康・福祉機器といった分野に留まらず、超高齢社会の中で人々が安全、安心、快適に暮らせる社会システムの構築に対して機械産業が果たす役割を考えることを意味しています。自動車メーカー各社の自動運転走行への取り組みや安全技術の開発はその先行事例といえます。つまり、これまで機械産業は企業の生産性の向上や効率性の追求に大きく寄与してきましたが、これからは国民一人一人が安全、安心、快適に暮らせる社会の実現に向けて、技術や製品を提供することの重要性が高まっていくものと考えられます。その意味では、生活の質(QOL)の向上に向けた新事業展開こそが機械関連企業にとって重要な鍵となるものと思われます。
三つ目は、これが最も喫緊の課題ですが、地域産業の再活性化に機械産業が果たす役割です。これまでの地域産業政策の柱は、大企業誘致に力点が置かれてきましたが、こうした企業や工場の誘致だけでは地域産業の再活性化を実現することは困難な時代にあると思われます。如何にして新しい産業や企業を創出することができるのか。この問題に機械産業は何ができるのか。この課題解決には、地方地域の中小企業の新事業展開や起業家育成の環境整備が重要となります。特に産学官連携あるいは地方銀行を加えた産学官金連携を加速させることが必要です。そして、機械産業は地方地域の中小零細企業の潜在力に対してこれまで以上に目を向け、新事業展開を促す仕組みづくりに貢献しなくてはなりません。また、起業家育成との関連では、若者にとって魅力ある機械産業の姿をより明確に示し、若者の発想を育てイノベーションに繋げることが必要です。
以上の三つのキーワードは相互に深く関係しています。機械振興協会では、事務局、技術研究所、経済研究所が一丸となって、また、技術研究所と経済研究所の相乗効果を発揮しながら、こうした課題の解決に微力ながら努める所存でございますので、引き続き皆様からのご指導、ご支援を宜しくお願い致します。
一般財団法人 機械振興協会
会長 庄山 悦彦